03話 七瀬来る

 異常な事態に仮病を使って学校を休むことになったのて、その間の時間が自由になった。という訳で、空いた時間に出来る限り情報収集をしようと考えた。

 まずは家探しを行う。女性として過ごしていた岬アキラとしての記憶が正しいのかどうか、ソレを確かめるために行う。

 一階にある書斎に行って、小さな頃からの姿を撮った写真が収められたアルバムを引っ張り出してくる。アルバムがある場所は正しく記憶されていたのか、すぐに見つかってパラパラとめくり眺める。そして記憶にある男としての自分の姿と写真とを見比べる。

「見た目は似ているような、似ていないような……。それと背は俺と同じ小さいままか」

 よく童顔で弱々しい見た目をイジられていた俺は、顔や身体に若干のコンプレックスを抱いていた。そして身長も男性としては低めだった。それは女性である岬アキラである自分も苦々しく思っていた気持ちを記憶している。
 だから、あまり印象に残っていない自分の顔だけれど写真を見てみたところ似ているような気もする。

 ただ見た目は似ていると感じたが、決定的に違う部分もあった。どの写真でも女物の服装を身にまとい、胸の部分には男性にはない大きな膨らみがある事。

「うわっ、っと!?」
 アルバムをめくっていると突然、上半身を裸で過ごしている写真が目に入り慌ててアルバムを閉じた。女性らしい貞操観念が薄いのか、胸を隠すことなく思い切りさらけ出している自分。

 写っているのは自分だと分かっているけれど、今は男としての意識が強いのか女性の裸を見て慌てたり少し興奮してしまったという、恥じらいがあった。

「うん、もうココは大丈夫かな。次を調べよう!」
 自分に言い聞かせるように、今の出来事を気にせず次の行動に移る。取り出したアルバムを元の場所に戻して、急いで書斎から出てくる。そして一階にある部屋のキッチンからリビング、トイレに玄関にお風呂と次々に家の中を確認していく。

「どの部屋も記憶通りにちゃんと有った。という事は記憶していることは妄想だったなんて事は無いか」

 疑り深く自分の女性としての記憶を信じ切ることは出来なかったが、やっぱり実際に今まで生きてきた我が家であり、記憶しているように人生を送ってきたらしい。

 俺は家探しを終えて自室へと戻り、パソコンを起動した。インターネットを開いて疑問に思うことを次々に検索して調べていく。男性という貴重とされているらしい存在についての扱い、自分と同じように目覚めたら男になっていたという話や噂が無いか、男として記憶している出来事と女として生活していたこの世界での出来事の異なる点が無いかについて。

 キーボードを次々に叩いて、手当たり次第に調べながら考えて今後どうするべきか予定を立てるための情報を集めていく。そうしている内にお昼の時間もいつの間にか過ぎて夕方になっていた。昼食を取るのも忘れるぐらいに集中して調べていたらしい。

「あー、疲れた」
 約半日中パソコンに向かい合って調べごとをしていた俺は、椅子に座り続けて背中やお尻の痛みを感じていた。休憩を入れようとグーッと椅子の上で背伸びをしたりストレッチをして筋肉を伸ばす。

 色々と調べてみたけれど好ましい結果を得ることは出来なかった。そしてやっぱり自分ひとりで考えるのには限界があり、良いアイデアも思い浮かばない。

 ピンポーンと階下からインターフォンの鳴る音が聞こえてきた。窓の外は夕日でオレンジ色に染まり、時間は午後五時を過ぎた頃だった。約束していた七瀬寧々が家へとやって来たのだろう。

「アキラー! 来たよ」

 玄関の扉が開かれる音が聞こえてきて、女性のハスキーな呼ぶ声も聞こえてきた。聞き覚えのある女性の声だった。

 俺は呼ばれる声を聞いて途端に緊張してくるのを自覚していた。家に来てくれるように頼んで来てもらったのに、今の変わり果てた姿で現れて事情を話したとして果たして現状を信じてもらえるのたどうか。

 しかし七瀬寧々は勝手知ったる他人の家という感じで、階段を登ってきている音が自室に聞こえてきていた。母親が出張でよく家に居ない事を知っている彼女は、気軽に我が家に入り浸っていたからだ。もう扉を開いた近くまで来ているようだから、もはや会わないという選択肢は無いだろう。

 俺は覚悟を決めて、七瀬寧々と出会い事情を説明するという覚悟を決めて自室の扉を開いて彼女を招き入れた。

「や、やぁ。七瀬……さん。わざわざ来てくれて、えっと、ありがとう」
「へ? あ、あきらだよね。 え? あれ!?」

 ノブを握って扉を開いて落ち着いている風を装おうとしたが、ぎこちない言葉で挨拶と来てくれたお礼を言う。しかし対面した七瀬寧々はというと、俺の顔を凝視するなり混乱したのか言葉が乱れていた。そして、頭から胸へと視線を動かし下半身を見ると、再び俺の顔を凝視してきた。

 身長が155センチの高さしか無い小さな俺は、身長が175センチもある彼女を見上げる形となっていた。女性として七瀬寧々の身長が高いという印象を抱いたが、この世界の女性では平均的な身長である。そして身長が小さいほうが男っぽいと指摘される世界である。

「一体どうしたの、その胸!? 見た目だけでなく、胸も? ってか男になったって、性転換手術!?」

 そして七瀬寧々は俺の胸部を指差して、そう叫んだ。

 

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