閑話01 助けを求める声

「あれ? 珍しい」

 スマートフォンの通知に現れた送信者の名前を目にした七瀬寧々は、そう呟いていた。なぜなら、この送信者は余程の事情が無い時以外には向こうから連絡を送ってくる事が稀であり、今までで指で数えられる程度の回数しか記憶に無かったからだ。

 つまり、アキラから送られてきた文の内容も余程のことなのだろうと考えて、授業中ではありながらもスマートフォンを片手で操作し送られてきた文を確認してみる七瀬。

”ちょっと相談したいことがあります。暇な時間に連絡をください”
「相談? 一体なんだろう……、ますます珍しい」

 そう書かれた文字を読んで七瀬は、よっぽどの事情があるらしいが大丈夫だろうかと、幼馴染である少女の岬アキラの事を心配していた。

”どしたん?”
 すぐさま返信を打ち込んで事情を聞き出そうと、スマートフォンを操作して彼女の返事を待つ。

「ん? 一体どういう事……?」

 岬アキラからの返事を読んで、不可解だと疑問を浮かべる七瀬。なぜなら、返事には次のような文が書かれていたからだ。

”朝起きたら男になっていました。どうするべきか迷っています”

「(起きたら男になってた? どういう意味だ?)」
 岬アキラは事実を簡潔に伝えようと考えた結果の文だったが、七瀬寧々は何かしらの意図があっての文だと考えて深読みした。男になったなんて文字通りの意味では無いと。相談事があると言っていたから、何か悩みがあっての事だろうか。

 155センチしかない低身長に弱々しさのある童顔という見た目に、男っぽさのある彼女だった。そんな男っぽさのあるアキラは男のように見られたり、可愛いと言われる事を嫌がっていて、日頃からストレスを感じてる事を七瀬はよく知っていた。

 そんなアキラが自分のことを”目が覚めたら男になっていた”なんて言うだろうかと疑問に思ったのだっだ。

”どしたん?”
 だからなるべく岬アキラが深刻なトーンにならないように、努めて気軽な感じを装って返信する。そうすると、彼女は更にこう返信してきた。

”今日学校が終わったら家に来てくれない? そこで詳しく話すから”
”とりあえずわかった 放課後家に行くよ”

 放課後に会う約束を取り付けて、チャットアプリでの会話は終わった。しかし、珍しいことがあるものだと改めて思う七瀬寧々だった。アキラの家にはしょっちゅう行くし、わざわざ約束を取り付けることなんて今までに無かったから。

 よっぽど悩んでいることが有るのだと、事態を深刻に捉える七瀬。そして今日の放課後は間違いなく、岬アキラの家へと直行しようと決めた七瀬であった。

 

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