02話 仲間を呼ぶ

 これからどうしょうか。解決するべき問題を頭に思い浮かべながら、引き続きベッドの上であぐらと腕を組んで座りながら考える。

 男だとバレるのはマズイ。ならば、女として振る舞い生活を続けるのか。でも隠し通せるかどうかが不安だし、隠し事をして日常生活を送るなんてストレスが半端なく溜まりそう。

 じゃあ、誰とも会わないように家に引きこもって過ごすのはどうか。都合のいい事なのかどうか、今家に居るのは俺一人だけであった。一緒に暮らしているのは母親だけで、父親はもちろん家には居ないし別の所で暮らしている。

 どうやら弟が一人居るようだが、男の子だったので生まれてすぐ赤ん坊の頃に然るべき所に引き取られて以後、顔を合わせたことも無い存在だった。生きているらしい事は伝え聞かされていたが、どんな風に育っていて、現在は何処に住み、どんな生活をしているのかさえ分からない。

 という訳で四人家族だという我が家、けれど今は母との二人暮らしだった。そして、仕事人間であるらしい母親は働くことに没頭し、繰り返しの出張で家に居ることが殆ど無い。そして記憶が正しければ今も出張に行っていて、しばらくは帰ってこないハズ。だから家に引きこもっていれば、誰とも会うことなく男だとバレる心配もない!

「うーん、でもなー」

 良さそうだと思い付きのアイデアだったが、すぐにソレを否定する。引きこもるのにも限界があるだろう、という理由で。

 いつかは出張から帰ってくるだろう母親とは顔を合わせざるを得ないし、食料の問題もある。しばらくの間は買い置きがあるけれど、食べればそのうちに尽きるだろうから買い物に外へと出て行かなければならない。

 結局、家に引きこもるという作戦は問題の先送りにしかならない。その間に凄まじい想像力を発揮し考えて、起死回生の何かを思いつくかもしれない。元の姿に戻る何らかの方法が考え浮かぶかもしれない、でもそんなアイデアが都合よく浮かぶとは到底思えない。

「あれこれ一人で考えても良い方法は思い浮かばない。ここは、誰か信頼できる人に頼る他に無さそうかも……」

 人は一人で生きて行けない。そして今の問題も一人では解決できそうにない。ならば信頼できる誰かを探そう。そして、今の状況を打ち明けてしまおうと決意する。俺が男であると知られても問題の無い誰かに。

 真っ先に思い浮かんだ頼れるべき人は、親である母親だった。だがしかし、今は出張で遠くに行っているらしい事を思い出す。今言って仕事を投げ出し戻ってきてもらうのは負担になってしまうだろう。いつかは事情を話して協力してもらえるかどうか問うけれど、タイミングは今では無い。

 だから、別の人間で誰か居ないか更に考える。そうして、母親の次に思い浮かんだのが幼馴染である七瀬寧々の事だった。

「あぁ!?」

 幼馴染のことを思い出して、目覚まし時計を見た瞬間に声を上げる。自分は学生で、今日は平日。あれこれ考えこんでいるうちに、既に授業が始まる時間を大幅に過ぎていた。思い切り遅刻だった。

 慌ててベッドから腰を上げて、学校に行く準備をしなければと反射的に動き出そうとした俺だったが、思い直して動きを止めた。

「仕方ない、今日は仮病で休ませてもおう。そもそも、学校に行ける状態でもないし」

 今から行っても遅刻は逃れないだろう。しかも今の時間に行けば注目を浴びるだけ。ただでさえバレたくないと注目を避けたいと考えているのに。それになりより、今はむやみに外に出て行っては危なそうだと考えての仮病だった。

 机の上に置いてあった充電中のスマートフォンを手にとって、クラスメートの友人に風邪をひいたので休みますとチャットアプリで連絡を入れる。

”かぜをひきました 今日は学校に行けそうにないから先生に伝えておいて”

 片手でスマートフォンを操作し、友人宛に文字を入力して送る。時間を確認すると今は二時限目の授業時間中だろうから返信が来るまでしばらく待とうと考えていたら、すぐさま返信があった。

”大丈夫みまい行こうか?”
 こんなに早く返信があったことに驚いた。それにすごく心配してくれているようで、見舞いにも来てくれようとしていて、仮病だという嘘に少し罪悪感を感じる。

”うつすと悪いから来ないで。もっと酷くなったら頼るかも”
”おっけーわかった 先生に伝えとく。お大事に”

「よし、これで家に来られる心配もない。しばらくは学校に行かなくても時間を稼げるか」
 やはりだいぶ心配してくれている様子の友人を騙してしまったことに再び罪悪感が……。けれど切り替えて、次に協力を得るために七瀬寧々に向けて連絡を入れる。

”ちょっと相談したいことがあります。暇な時間に連絡をください”
 そう送ると、どう真実を話そうか内容を考えて待とうと思っていたら、友人と同じようにすぐさま返信があった。

”どしたん?”
 彼女には嘘はつかず真実を話そう。文面をじっくりと考えて伝わるように気をつけながら、でも簡潔に”

”朝起きたら男になっていました。どうするべきか迷っています”
”どしたん?”

 速攻で直前と同じ文字が送られてきた。その返事を見て、どうやっても文字だけで伝えきれそうにないと理解した。

 電話で話せば声の変化に気がついくれるだろうか。いや、やっぱり実際に見てもらうのが一番早いだろうか。とにかく、一度会って話をしよう。

”今日学校が終わったら家に来てくれない? そこで詳しく話すから”
”とりあえずわかった 放課後家に行くよ”
”ありがとう、待ってる”

 七瀬寧々と放課後に会う約束だけ取り付けて、とりあえずスマートフォンでの通信を終えた。後は目の前に来てもらって、どう事情を説明しようか考える。そして助けてもらえるかどうか、それが心配だった。

 

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