第09話 同郷疑惑

 レオンが支払い奴隷を買い取る支払いに取り出してきた宝石の鑑定を行っている間、しばらく時間が空いたので他にも奴隷を見せてくれと頼むと、店主のヨハンは快く引き受けた。

 奴隷のルーを買い取る為のお金をレオンが一括で支払える資金を持っている事が確認できたので、信用を得たためだった。そして他にも奴隷を紹介して、まだまだ資金に余裕がありそうなレオンにあわよくば買い取ってもらおう、という魂胆があったから。

「何か、要望はありますか?」
「それじゃあ、今度は戦闘が出来る奴隷を。男女関係なく見せてくれるか?」
「了解しました」

 レオンの次の要望は、戦闘が出来る奴隷だった。もちろん、注文に応えられるぐらいの奴隷を十分に取り揃えているので、ヨハンは部下の店員に言って、戦闘が出来るという奴隷を連れて来るよう指示する。

 過去に冒険者として活躍していた者、騎士として務めていた者、見世物として闘技会で戦っていたという剣士、等など。次々と癖の強い奴隷を見せられていくレオン。

 けれども、どの奴隷を見せてもらっても彼の感性に引っかかるような人物を見つけることは出来なかった。

 奴隷を見ている内に時間はだいぶ経過していて、宝石の鑑定も既に終了していた。レオンはルーの次に、買い取り取りたいと思えるような奴隷がもう1人決まることは無かった。

 次が最後ということで見せてもらう奴隷が応接室に並べられていく。最後の最後で、その中に居る1人だけ、気になった娘を見つけ出したレオン。奴隷ルーを見た時とは別の、凄く気になってしまう注目点があった。

「その娘は?」
「はい、この子の名はケイ。普通の人間で、まだ訓練前なのですが戦闘力に見どころの有りそうな、将来有望な男の子です」

 年齢は、まだ10歳を超えたぐらいの幼い娘だと見るレオン。そんな奴隷を、店主のヨハンは男の子と言い切っていた。どう見ても、レオンには女の子にしか見えなかった。

 しかし、その事について店主や店員が誰も指摘をしない。レオンは何故だろうと思いつつ、ヨハンの説明する話を頷きながら聞いていた。

 どうやらケイは最近この奴隷商に連れて来られたという奴隷らしくて、今から教育を施して戦士に育てるつもりの人材だという。

「今の所、この子は十分な戦闘能力を備えているのを確認しております。なので、我々が戦闘訓練を施す前に引き取る、というのもお得でしょう」

 奴隷商では、お客の要望に応えられるように幼い奴隷の場合は育てる、という事もしていた。

 その為には費用が掛かるけれど、それだけお客様のニーズを応えるために準備を整えている。それは馬鹿には出来ない額の費用だった。

 だがしかし、そんな費用を掛けて育てる前の奴隷だからこそ、価格を安くして提供できるとレオンに説明する。安く引き取れるし、奴隷商が一人分の教育費と生活費を節約できると両者にとって好都合だと語る。

 ところでレオンが彼女に目を向けた原因とは、彼女から師匠と似たような雰囲気を感じ取ったからだった。レオンは、師匠から教えてもらった呪文を試してみることにした。

「カレー、ラーメン、ハンバーグ」
「っ!」

 レオンの呟いた言葉に、奴隷のケイは顕著に反応する。しかも、クー、とか細い音が彼女のお腹から鳴ったのが聞こえた。その音をレオンに聞かれたのがわかったのか、恥ずかしそうに顔を赤色に染める。

 そんな彼女の反応を見て、言葉の意味が食べ物の名称だという事をケンという名前の奴隷はしっかり理解して居る、という事は師匠と同じだと確信したレオンは彼女を引き取ることに決めた。

「この娘も引き取るよ」
「ありがとうございます」

 こうして様々な奴隷を見せてもらった結果、レオンは奴隷商から2人を買い取ることに決めた。

 1人は、自分の生活を支えてくれるように任せる奴隷としてルーという名の獣人。レオンと同年齢である16歳の女の子。

 そして、もう1人はケイという名の奴隷。レオンには色々と気になる点がある、話を聞いてみたいと思う、10歳の幼い娘。

 値段的に高額だったルーと、ルーに比べると10分の1の価格で引取ることが出来たケイ。

 その値段の大きな差を生み出した要因は、教育を受けている分の教育費用が加算されているルーと、まだ教育を受ける前に買い取る事により教育費用分を値引きされたケイ、という事だろう。

 その後、奴隷の買い取り価格を宝石で支払いを済ませると、ヨハンから奴隷の扱いについて簡単に説明を受けることになった。

「レオン様は、奴隷を管理するのは初めてですか?」
「うん、初めてだね」
「簡単に説明させて頂いても?」
「よろしく頼む」

 そして始まった、奴隷商の店主であるヨハンによる奴隷の扱いについての説明。

 一番に注意しなければならない事は、奴隷商から奴隷を購入した後の一年間は、奴隷をどんな扱いをしているのか、購入した奴隷商に定期的に報告する義務があるという事。

 もしも、それを怠ったり無視していると王国から調査が入る場合がある。そして奴隷の扱いが悪いという事が判明すれば、奴隷主は罪に問われる可能性があった。

 そして、奴隷を売った奴隷商にも管理不足という事で罪が及ぶ可能性もあるから、説明をするヨハンも不足無いように注意して説明をしていく。

 それほどに王国では奴隷の扱いについて厳しく取り決められていて、奴隷主は監視されていた。

「奴隷に対して過剰にお金を掛けたり優しく保護する必要はありませんが、生活を保証してあげるよう気をつけて下さい」
「分かった」