第07話 お買い物

 なんとか試験に合格して冒険者の証を受け取ると、ギルドから認められた正式な冒険者として活動が可能となった。ただし色々と予定していた事は崩れて、失敗も多く有ったけれど。

 まさか、自分の他には冒険者の試験を受ける者達がたった5人しか居なかった事。しかも、そのうちの2人だけしか試験を合格していない。まぁ、その2人も次の実地試験に合格できるかどうか分からないけれど。

 レオンの見立てでは、女戦士のルチアは合格するだろうと思っているのだが、外套で全身を隠して性別も分からないあの人物の実力はどうなのだろうかと、測りかねていた。

 只者ではなさそうだったけれど実際はどうか、あの短い時間では確認できず予想はつかなかった。できることなら2人とも合格して欲しいとは思うレオンだったが、今の所はどうなるか分からない。

「それよりも」

 今日から冒険者として活動を開始できるようになって、レオンには次の予定が決まった。それは、冒険者としての仲間を増やすこと。

 そして最初の仲間にするべき人物についてレオンは、師匠から指示を受けていた。

 冒険者ギルドから歩いて、街の中を移動していく。時間は昼頃を過ぎた頃であるが、まだまだ商店が賑やかな時間のうちに、足を踏み入れる。

 昨日確認した場所は、確かこの焦点が集まる先にある筈だとレオンは辺りを見回して目的地の店を探していた。

「お兄さん、コレ買っていかない? お得だよ」
「ありがとう、でも今急いでるんだ。また今度来るよ。ごめんね」
「本当? 絶対来てね!」

 露天商をしている女商人が果敢にレオンへと声を掛けるが、声を掛けられた彼は足を止めずに巧みに断って先を急いでいく。

 そんなふうにして商人の売り込みを避けつつ、少し雰囲気の暗く感じるような道を進んだ先にあったのは、何の変哲もない建物だった。

 知らなければ見逃してしまいそうな、どこにでもありそうな建物。ひっそりと掲げられた看板があるので、一応お店だということは分かる。目的がある人間以外は誰にも見られないように、という隠すような印象を受けるレオン。

 しかし彼には、今から建物の中へと入る目的がしっかりとあった。なので気にせず、重厚な扉を開けて建物の中へと入っていった。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用でしょうか?」

 建物の中に入ると、店員の男がレオンの前に立ち塞がった。入店してきてたレオンが客か、それとも商品を見に来ただけの冷やかしか見極めるために。

「身の回りの世話を頼める子を1人買いたい」
「世話を頼める娘ですね。ご予算は?」
「金なら幾らでもある、とりあえず今すぐに用意できる子を1人。これで頼む」

 レオンは金額については特に条件を設けず、店に居る奴隷を見せてくれと頼んだ。店員にチップを渡しながら。

 受け取ったチップの額は、その男店員が1週間働いてようやく受け取れるぐらいの給料分はあった。そんな額をポンと渡してくるような太っ腹な客だと認識すると、店員は急ぎ腰を低くして案内を始めた。

「もちろん喜んで。お客様のご希望に合うような娘を準備しますので、まず奥の応接室に案内します。腰に下げている武器は、コチラで預かりますね」
「ああ、よろしく頼む」

 武装を外され建物の奥にあった応接室に案内されたレオンは、ソファーに座らされると担当の者を呼んでくると店員は告げて部屋を出ていく。そして、部屋の中に1人で待たされる事になった。

 応接室の中を観察してみると、ずいぶんと広くて部屋の隅々に高そうな壺やら絵画やらの調度品が飾られている事が分かる。この奴隷商、なかなかに儲けているという様子が部屋の飾りに現れていた。

 そんな状況でレオンは黙って座り待っていると、部屋の中に先ほどとは別人の店員が入ってきた。

「いらっしゃいませ、お客様。ただ今準備しておりますので、もうしばらくお待ち下さい」

 やって来たのは、えらく低姿勢な男の店員。貴族が着るような仕立て上げという綺麗さの服装を身に纏って、立派な髭を蓄えた男だった。そんな彼は、レオンの座る向かいのソファに腰を下ろす。

「この奴隷商の店主をしております、ヨハンと申します。以後お見知りおきください」
「僕の名はレオン。よろしく」

 そしてレオンと店主の2人は他愛もない世間話をして、奴隷の準備ができるまでの時間が過ぎるのを会話をしながら待っていると、応接室に連れて来られた奴隷たちが続々と部屋の中に並べられていく。

 どの奴隷も美しい見た目をした女性であり、成人した者から若い娘まで様々な者たちが集められている。

「どうでしょう、今そこに並べている者達の中に気になる娘は居りますか?」
「うーん、彼女たちの中で一番料理の上手い子は誰かな?」
「……料理、ですか?」
「身の回りの世話をしてもらう中で、一番気を使ってもらいたいのが食事だからね」
「えっと、はい。そうですね、今確認してきます」

 身の回りの世話という言葉を早とちりして、性的な事を要求を受ける奴隷を探しているのだと勘違いして対応してしまった店員により、ヨハネには間違って伝わった情報だった。

 そして店主ヨハンも、まさか本当に王都にあるこの店に生活するための世話を任せる奴隷を探しに来た、とは思いもしていなかった。

 話を伝えてきた店員を今は怒るわけにもいかず、しっかりと要望を伝えてくれなかったレオンには何も文句は言えず。そして、彼は機転を利かせる。

「実は、ここに揃えた奴隷たちは店で売り出し中の奴隷たちです。いかがでしょうか?」

 急いで代わりとなる、料理が出来る奴隷を用意させながらも、コレは商売のチャンスだと捉えて奴隷の紹介を始めるヨハンだった。