第04話 求めた反応

 一番に立候補した女戦士のルチアと、試験官を務めるギルドマスターでもあるクリスが向かい合っている。

 他の受験者であるレオン達5人は、試験を始める彼らから少し離れるように移動すると、遠くから2人の様子を伺っていた。

 クリスが手に持つ武器は、片手でも扱えるような長剣。対してルチアは、レイピアと呼ばれる細身の刀身で刺突用に特化している片手剣だった。攻撃力の高いクリスに、スピードのルチアという感じだろうか、とレオンは見ていた。

「じゃあまず、好きなように攻撃してこい」
「いきます」

 ルチアは返事をした瞬間に前傾姿勢をとって前に倒れるように身体を低くすると、クリス目掛けて突進していく。レオンの目から見ても、彼女はなかなかの速さだった。

 けれども、クリスは剣を構えると前もって予想していたという風にレイピアの突き刺す攻撃を、刀身の腹で受け止めた。

「っ!?」

 回避するだろうと予想していた攻撃が、まさかあっさりと見切られ受け止められるとは思っていなかった。ルチアは、驚きの表情を浮かべて動きが止まってしまう。その一瞬を見計らって、クリスは思いっきり長剣を振り回した。

「おらっ」
「キャアッ」

 レイピアごと吹き飛ばされて、後ろに倒れ地面に転がってしまう。急いで立ち上がろうとした瞬間には、クリスの剣がルチアの首元に当てられて試験はすぐに終了となった。

「うん、スピードはなかなかだが、まだ未熟な部分が沢山あるな。今日の試験は合格にしておくから、次の実地試験に頑張って挑め」

 試験は一応の合格判定ということで、彼女は次のステップに進める事になった。実地試験というのは、実際にモンスターと対峙して戦えるかどうかを見る試験である。

「ありがとうございます」

 すぐに終わってしまった結果に悔しそうな表情を浮かべつつ、何とかそう言うルチア。彼女的には、もうちょっとやれる筈だったと思っている様子だったが、試験官のクリスには何も文句は言わず、そのまま後ろに下がっていく。

「さあ、次は誰が来る?」
「じぁあ、俺が」

 そして女戦士ルチアの試験が終わると、次の立候補者を募るクリス。レオンが行こうとする先を制して、3人組が出てきた。

「よし、来なさい」

 次は、彼らの試験が1人ずつ行われる。

「うわっ!」
「ぎゃっ!」
「うぇっ!?」

 3人は1人ずつ試験を順番に受けていったが、3人共がアッサリとクリスに返り討ちにあって彼らの試験は終了。

「うーん、これは冒険者には向いていないな。このまま冒険者ギルドに所属するつもりなら、苦労するぞ?」
「「「……」」」

 実力不足という厳しい現実を突きつけられた3人は、黙ってクリスの話を聞くだけだった。反論もできないほど、あっさりと倒されてしまったから。

「残念だが、君たちは不合格だ」

 冒険者になりたいと試験を受けに来た人間を、出来るならば全員合格にさせてやりたいと思っているクリスだったが、冒険者としての実力には達していないと判断すれば不合格にせざるを得ない。実力がなければ、冒険者にしても無駄死にするだけだから。

「じぁあ、次は誰が?」
「それじゃあ、次は僕が」

 4人の試験が終わった後になって遂に順番がやって来たレオンは、満を持してという気持ちでクリスと対峙する。クリスと同じ武器である、宿屋からからココまで腰から下げていた長剣を鞘から抜くと、剣先をまっすぐ相手に向けるレオン。

「いきますね」
「来い」

 最初からある程度、本気を出してやってみたい。レオンには、そんな気持ちがあったけれども、先ずは相手の実力を確認するつもりで攻撃を仕掛ける。実は、対人戦なんて初めてに近かったので、手加減の具合が分からなかったから。

 だから、まず最小限の力でやってみるレオン。

「ぐうっ」

 ガキンという、剣と剣の金属がぶつかる音が辺りに響く。そしてレオンの攻撃を受けて、クリスはうめき声を上げていた。

 見た目からは分からない、並の戦士ならば体ごと吹き飛ばされるんじゃないかと思える程のパワーが有ると、攻撃を受けたクリスは感じられた。

 だがギルドマスターとしてのプライドもある彼は武器の長剣も手放さずに、なんとか耐え抜いて攻撃を受けても立てていた。

 けれども、立っていられるだけだった。今のレオンのとんでもないパワーの一撃を受け止めただけで、腕がしびれて反撃できないという見えないダメージを負っている具合いだった。

「な、なるほど、合格だ。お前は今日から冒険者として認めよう。後で冒険証を発行してもらうように」
「え!?」

 レオンは実地試験も飛び越えて冒険者試験の合格判定を受けると、今日から冒険者ギルドから認定された冒険者となった。思いがけない試験官の言葉に、レオンは驚き声を上げる。

「僕は、まだまだ出来ますよ。見てくれませんか?」

 出来れば、見てほしい。チートの力を見せてアッと驚かせて、有名になるために今回の出来事を踏み台にして、のし上がりたい。

「いいや、もう十分に君の実力は分かった。合格だ」

 だがしかし、合格は揺るがぬ決定だった。レオンは合格判定を受けたのに、そんなぁ、と落ち込むような気分になる。本当はもっと圧倒的な力を見せて、街中で噂されるぐらいな期待の新人となる予定だったのに。

 もっともっと目立ちたいのに、これではインパクトに欠ける……。

「ちょっと待ってください、彼は本当に合格なんですか? 何故、彼は実地試験をパスしたんですか!?」

 レオンが目立ちたいと考えていたその時に、そう異議を唱えたのは女戦士のルチアだった。