第03話 試験開始

 冒険者になるための試験は朝からスタートします、と曖昧に聞かされていた為にいつ開始されるのか定かではなく、ボッーと立って冒険者ギルドの建物内で待っている受験者達。

 レオンの後には、どうやら誰もやって来る気配が無く、6人から人数が増えないまま受験者達は試験が開始されるのを黙って待っているだけだった。

 するとそこに現れたのは、顔に大きなキズを負った大男。ギルドの建物内の奥から出てきたので、現れた彼が冒険者試験を行うスタッフだろうと推測したレオン達。そして、その予想は当たっていた。

「おう、待たせたな」

 試験の審査をする為にやって来た、冒険者ギルドのスタッフである大男は低い声で遅れたことを悪びれもしない様子で、そんな言葉を吐いた。そんな彼の名前は、クリストフ。この王都にある冒険者ギルドで最高責任者を務めているギルドマスターであった。

 見た目は、まだまだ現役の冒険者だと感じるような雰囲気、そして筋肉の付いた体つきをしているけれど、しっかりとギルドマスターの責務は果たしている。

「なんだ、今日は人数が少ないな。来たのはコレだけか、ミルト?」
「はい、クリスさん。試験の受付をしたのは、今この場にいる彼らだけです」

 少ないと言ったギルドマスターのクリスは、6人の受験者達に一人ひとり視線を向けて、吟味するような感じて見ていく。

 固まって集まっている仲間だという感じの男達3人組、何故か怒った様子で居る女戦士が1人、やけに整った顔をしていて戦いには向かなそうなレオン、そして外套で全身を隠す謎の人物が1人。

 計6人の受験者達それぞれを見て、どの程度の実力があるのかを予め測ろうとするクリス。そして、だいたいの実力予想を付けて半分はハズレで、半分はまぁ当たりだろうと結論を出した。

 受付嬢の言葉を聞いたレオンは、失敗したと思っていた。どうやら、いつもの冒険者試験に比べると受験者が少ないらしい。それはつまり、最初の計画でインパクトを与える観客となるべき人達が少ないという事だった。

 受験者が6人というのは、少ないと思われる人数なのか。普段はどれ位の人数が試験を受けに集まってくるのか、気になっていたレオン。だがもうすぐ試験がスタートしようとしているので、受験者数が少ないからと言って今更キャンセルするのは無理そうだった。

「まぁ良いか。早速試験を始めるからついてこい」

 そう言って先に歩き始めたクリスの後ろに、ぞろぞろと黙ったまま付いて歩く6人の受験者達。ギルドの建物奥へと進み、廊下を進んでいく。そして、廊下を進んだ先で外に出る扉をくぐる。

 ギルドの建物内から移動して、武器を振り回して戦っても大丈夫な広さがある冒険者ギルド所有の運動場へとやって来た。

 普段は冒険者向けに戦闘訓練が行われているような場所であるが、今日は新しく冒険者となる者たちの試験を行うために、クリスが朝から誰も中に入れないようにと予約を入れておいて開けてあった。

 運動場の中央に集まって立ち並ぶ6人の受験者達と、ギルドマスターであり今日の試験官を務めるクリス。

「冒険者の主な仕事は、モンスターの駆除だ。モンスターを狩って、その死体を持ち帰ってくる事で収入が得られる」

 クリスが話し始めた冒険者についての言葉を、真剣に話を聞いて頷いているレオン。師匠に教えてもらった通りだったと、昔聞いて記憶していた話と同じだと納得するように熱心な様子でクリスの話を聞いていた。

 その他の男達や女戦士、そして外套の人物は既に知っている情報だとクリスの話を若干うんざりしながら聞いている。そして、早く試験を始めてくれないかと内申ては思っていた。

「まぁ、他にも”おつかい”と言われている低級冒険者向けの依頼が用意されているので、それ受けて収入を得る方法もある。だが、ほとんどの冒険者は戦闘するのが必須になってくるだろう。だから今から、お前たちが冒険者としての戦闘が可能かどうか、水準に達しているか俺が君たちの戦闘力を審査していく」

 クリスの話を聞いてレオンは思い出していた。確か、戦闘をしないで低級冒険者向けの依頼だけを淡々とこなして、とても有名になったという冒険者も居るという話を師匠から聞いていた事を。

 もしも、そんな戦闘をしないでコツコツと簡単な依頼だけを受けている人物を見つけても決して侮ってはいけない。

 実は、そんな堅実な人物こそ凄い力を隠し持っているかもしれないから注意して見よ、という師匠からの忠告があったのをレオンは忘れていない。可能ならば、友好的な関係を築ければ良いかもしれないというアドバイスも。

「さぁ、誰から試験しようか?」
「私が先に!」

 クリスの言葉を聞いて、真っ先に反応して前に出てきたのは女戦士だった。彼女は、気合い充分に声を上げ剣を掲げて、誰よりも先に立候補する。

「良し君が一番最初だ。名前は?」
「私の名はルチア。よろしくおねがいします」

 レオンと対峙した時とは打って変わって、丁寧な態度で試験官のクリスと向かい合うルチアと名乗った女戦士。そして名前を聞いたレオンは、やはり聞き覚えはない名の女性だと思いつつ彼女の試験を見守った。

 冒険者試験がスタートする。