第02話 冒険者ギルド

 レオンが冒険者ギルドのある建物に入っていくと、既に何人かの今日試験を受けるらしい受験者が待ち構えていた。同じ目的を持つ彼ら受験者の視線が、レオンに注目する。もしかしたら、今日のライバルになるかも知れない、という警戒の視線が。

 けれども鋭い視線を向けられても特に気にした様子も無いレオンは、そのまま周りからの注目は無視し冒険者の試験を受けに来たことを伝えるために、受付に歩き近づいていく。

「冒険者になるための試験を受けに来ました」
「え? 受験ご希望の方ですか?」

 レオンの小奇麗な風貌から、どこかの貴族かもしれない。そして、依頼を出しに来た者なんだと勘違いしていた受付嬢のミルトは、レオンの言葉に一瞬戸惑ってしまった。

 彼のような容姿端麗で知的な雰囲気を漂わせている者ならば、わざわざ冒険者を目指す必要もなく城で騎士をしたりするような、ちゃんとした仕事を目指す方がよっぽど普通だったから。

 わざわざ冒険者になる道を選ぶ理由が分からない。冒険者ギルドで受付嬢をしているミルトの心に浮かんだ、彼女の正直な感想だったが。

 冒険者なんて成功できなければ地位もあまり良くないし、常に危険に晒されるような大変な職業。わざわざ選ぶべき仕事ではなく、他に働き口がいくらでもありそうなレオンには似合わないと思ったから。

 そして側で聞いていた他の受験者達も、冒険者になりに来たとレオンの言葉を聞いて失笑していた。

「あのヒョロヒョロの兄ちゃん、冒険者試験を受けるつもりらしいぜ」
「ご立派に剣を腰から下げて、かっこつけてるじゃねえか」
「へっ、顔が良いからって舐めてんじゃねぇぞ」

 バカにした言葉や、皮肉の言葉。そして、警告するような言葉を背中に浴びせかけられたレオンは、それで良し、と心の中で思っていた。

 師匠からは、まず最初にインパクトを与えるように、という事を教えられていたから。そして、大きなインパクトを与えるにはまず、相手に侮られている事が大事だと。

 彼らが今行っているように侮り、バカにしていた相手が、実はとんでもない実力者だった! という場面を演出するのが相手に衝撃を与える基本だと教えられていた。レオンの計画は今の所、順調に進んでいると言えた。

「本当によろしいのですか?」

 冒険者になるための受験を受ける手続きを本当に進めて良いのかどうか、受付嬢のミルトは心配そうな表情をして最終確認にレオンへと問いかけた。しかし、彼の選択は変わらない。

「もちろんです。受験の手続き、よろしくお願いします」

 レオンが笑顔を浮かべて意志を変えないという返事を聞いて、説得を諦めたミルト。せめて彼のキレイな顔にケガだけは無いようにと心の中で願って、レオンの冒険者受験について受け付ける書類を用意することにした。


***


 冒険者になるための試験を受ける手続きは終えて、後は試験を受けるだけ。まだ試験は開始しないということで、しばらく試験開始までの時間をギルドの建物内で待たされる事になった。

 改めて、レオンは自分と同じ冒険者になる為の試験を受けるという、受験者達に視線を向けて彼らの観察をする。自信があるとは言え、情報収集を怠ってはいけない。意外と足元をすくわれるかもしれない。

 レオンの他には、今の所5人の受験者が居るようだった。その中の3人は、先程のレオンが受験するという言葉をバカにしていた男たち。20歳から30歳ぐらいの年齢に見える彼らは、鎧を着て刀剣を腰につけて武装はしているものの、レオンには特に脅威とは感じられなかった。

 1人は部屋の隅に佇む、頭からすっぽりと覆う黒色の外衣を身に着けていて、男か女か分からない謎の人物。ちらっと視線を向けてレオンは観察を続けると、外衣の内側に色々な武器、ナイフからロングソード、槍やら小斧やら何か色々なモノを隠し持っている様子の暗器使いだと事に気がついたが、それ以上は特に何も分からない。

 そして、残りの後1人は若い女性の戦士だった。先程の男たちに比べて立派に見える鎧に、真っ赤なマントを背に羽織っている。そんな彼女は、何故かレオンの方に鋭い視線を向けていた。何だろうかと気になって、視線を向けてくる理由を聞こうとレオンは近づいて女戦士に問いかけた。

「あなたも、今日の試験を受ける人?」
「そうよ。悪い?」

 レオンの質問に、最初から喧嘩腰になって答える女戦士。そんな冷たい態度を取られる理由に心当たりはないレオンは、彼女の様子を疑問に思いつつ会話を続ける。

「それじゃあお互い、冒険者になれるよう頑張ろうか」
「ふん。私はアンタなんかに負けないわ!」

 レオンの言葉に、女戦士は何故か怒りをむき出しにして敵意を向けてきた。そして、怒った状態でレオンの側から離れていく。

 本当に何故、彼女が起こったのか理由がわからないので戸惑うレオン。名前すら知らない、今日はじめて目にした彼女から敵意を向けられるような原因に身に覚えはないく、理解が出来ない。

 そんな感じで試験が始まる前にゴタゴタがありつつも、冒険者となる為の試験はスタートした。