第16話 街の外へ

「はぁ、はぁ、はぁっ」
「大丈夫か? ルー」
「だ、だい、じょうぶ、です」

 冒険者としての活動を始めるために、街の外へと出てきたレオン、ルーそしてケイの3人。彼らは今、街から少し離れた丘のようになっている、見晴らしの良い場所に到着していた。更に遠くの方には、森や山も見えるような場所である。

 レオンが想像していたよりも、獣人のルーは体力が少なくてついて来るのがやっとの様子だった。そして今は、呼吸も苦しそうな状態で返事をするのがやっとぐらいに体力を消耗している。だが、苦しさには耐えて音を上げない。

 だがしかし、傍からの見た目では大丈夫じゃ無さそうだったので、レオンは休憩することに決めた。

「一旦ここで止まってモンスターが居ないか、辺りを観察してみよう」
「わかった」

 周りにモンスターは見当たらないのを先程確認していたが、念のために警戒するという理由をつけてレオンが休憩を申し出た。そして、レオンに合わせて返事をしたのがケイ。

 ルーとは違って、もう1人の奴隷であるケイはまだ十分に余裕がありそうだった。体はまだ成長していない10歳という幼さだけれども、流石は奴隷商の目に留まり戦闘訓練を受ける予定があるぐらいに見込みがあった、という訳だ。

 それにチート能力によって常人よりも遥かに身体能力が高いから、という理由もありそうだった。

 レオンが、ルーを街の外へと連れてきたのは彼女の能力を見る為でもあり、これから彼女を鍛えようと思っていたから。

 今まで使う機会の無かった、仲間成長促進という能力があった。それを、ルーに使ってみて観察してみようと考えていた。これで、どの程度の能力成長が見込めるのか。

 出来れば、ある程度は自衛できるぐらいに。そして後々には戦えるメイドとしてルーには育ってほしい、とレオンは考えていた。

 それから、ケイも転生者としてチートの能力をフルに活用してもらおうと戦いを教え込む事にしていた。

 その場で少し休んだ後、息が整ったルーを確認してから再び彼らは動き出す。

「先に進む前に、ちょっと確認しておこう」

 モンスターと戦う前に、まずは武器の扱いについて知っておく必要があると思ったレオンがアイテムボックスから取り出した。

 街からこの辺りの場所まではまだ、モンスターと遭遇する確率も低いけれど、その先からは出会う可能性が一気に高まるから、今のうちに準備しておこうという訳だった。

「この中から、好きな武器を選んで」

 ルーとケイの目の前にレオンは、次々と武器を置いていく。彼女たちは目にして手にとって、どれかしっくりとくる武器を探してもらう。

「これから先、どれを使っていけば良いか自分で見極めてみて」
「私はコレ」

 武器を持っていなかった手ぶらのケイが、レオンの取り出した武器の1つを手にとって手にはめる。それは、ガントレットと呼ばれる手を防護するために着用するような手袋型の防具だった。

「これで、相手を殴る」

 ケイが腕を振るって正面に向かってパンチを繰り出す。ガシュッン、ガシュッンと風を切る音と、唸るような金属のぶつかり合う音が聞こえた。ケイは超接近戦タイプの武器を選んだようだった。

「それじゃあ、私はコレを使ってみたいです」

 ルーが手にとったのは、弓と矢だった。彼女は中々難しい武器を選んだな、とレオンは思った。扱うのには技術がいるし、熟練に達するまでの道のりが長い武器だから。

 それよりもまず、弓を引くのには相当な腕力が必要でもあるので最初に扱えるかどうか見る必要があった。と思ったら。

「ちょっと撃ってみます」

 そう言って彼女は弓を前方に向けて構えると、軽々とした動作で弦を引いてスッと引き絞っていた。体力は無いけれど、腕力は十分以上に有るらしい。そのまま、指を離せば矢はルーの手から解き放たれて前方へと飛んでいく。後は動くモンスターに対して狙いを定められるかどうかだけ、という感じだった。

「ルー、上手いじゃないか。やったことがあるのか?」
「いいえ、撃ったのは初めてです。でも、見たことがあったので出来ました」

 レオンが問いかけると、意外にも初挑戦だったらしい事を教えてくれる。彼女なら、練習をして使いこなせそうだと思ったレオン。こうして、遠距離攻撃をしてくれる後衛も揃った。

 準備は整った、と先に進もうとしたレオン達。

「ん?」

 しかし、前方に何かを見つけてレオンは注目をする。彼の視線の先には、誰かが必死に走っている様子が見えた。そして、その後ろにはモンスターが付いてきているのも見える。

「どうしたの?」
「どうしましたか?」

 ケイとルーの2人が、足を止めて遠くの方に視線を向けたレオンに気付いて何事かと問いかける。

「女性が1人、モンスターに追われて逃げている様に見える。ちょっと確認してくる、後からゆっくり来てくれ」
「え? あ、はい」
「うわっ、はや」

 その他にも視線を向けて何事か起こってないか注意してから、レオンは状況を冷静に判断していた。他にはモンスターは見当たらず、人も見当たらなかった。

 目視してしまった彼女を見過ごすことも出来ず、レオンは今から何をするか簡単に2人へと伝えると、ルーとケイの返事も待たずに最高速で一気に駆け寄っていく。走り逃げているらしい、女性の下へと向かう為に。