第14話 これからの事

 深夜もだいぶ過ぎて、もうすぐ明け方になりそうな時間。レオンとケイは、ベッドの上で一緒に横になって色々と話をした後。

 レオンは最後に、師匠から託された夢についての話を始めた。それは、今後なにをして生きてゆくのかという彼の行動指針に関する話だった。レオンの奴隷であるケイにも関係のある話。

「師匠から託された夢?」
「そう、僕は師匠から2つの夢を託されたんだ」

 チート能力を託されて、それと同じように師匠から託されたという2つの夢についてレオンは語る。

「1つは、最上級ランクであるS級冒険者になって有名になること」
「冒険者?」

 レオンがS級冒険者を目指していることや、有名になると言っている事には引っかからず、冒険者という言葉を気にかけたケイ。

「あれ? 言ってなかったか。僕は昨日、冒険者になったばかり。それで、これからは冒険者として活動していこうと思ってるんだ」
「そうだったの」

 そう言えばとレオンは思い出す。奴隷商で手続きをしていた時、ルーとケイの2人は着替えの為に応接室には居なかった。その後も、特に自身の事について詳細を語ることはなくココまで来たことに。だから、レオンが冒険者であることを知る機会は無かったと。

 レオンは冒険者である。その時になってようやく知ったケイには、また別の疑問が生じていた。

「それじゃあ、家はどうするの?」
「いえ?」

 ケイが、何のことを指して言っているのか分からず疑問の表情を浮かべるレオン。

「レオンには、他に兄弟が?」
「いや、僕に兄弟は居ないが」

「じゃあ、やっぱり貴方が領地を継ぐんじゃないの?」
「ケイ、君は一体何の話をしているんだ?」

 話の噛み合っていない2人。何かを勘違いしているケイに気づいて、レオンが指摘する。

「だって、レオンは貴族なんでしょう?」
「いいや、違うが」

 レオンを転生者だと思いこんでいた時と同じように、再び彼は貴族だと事実と違う事を思い込んでいたケイ。

「そんな。でも、庶民にしてはありえない程の大金を持ってた。それに、貴方みたいな綺麗な顔をした一般人なんて、居るはず無いわ」
「言うほど、僕は貴族っぽい顔をしているかな?」

 レオンは自分の顔を触ったり、あごを撫でたりしながら勘違いされる理由を確認してみる。

 冒険者試験を受けた時に、見知らぬ女性から責められるような口調で貴族だと決めつけられた事があったと、レオンは思い出す。

「いいえ、貴族っぽいというよりも庶民ぽくないって感じかしら。肌には傷が全然無いし日焼けもしていない。だから肌は真っ白だし、そばかすだって無い」

 庶民ならば、働いている内に太陽の日に当たって肌が傷つく事が日常茶飯事。レオンのように綺麗な肌を保っている、ということは貴族かもしれないという予想の流れ。

「もしかして、その顔もチート?」
「いや、これは生まれつきだけど」

 ひょっとして、という予想で尋ねてみたケイ。チート能力で並外れた美貌を特典として求める者も居るだろうと考えて、美しいレオンの顔が実は師匠から譲り受けた物では無いかと聞いてみた。けれど、レオンはそうでないらしい事が分かった。

 ちょっと安心するケイ。しかし、だとするとやっぱり分からないと頭を悩ませる。

「ますます、庶民ぽくないように思う。もしかして本当は、貴族の庶子だったりする?」
「いいや、ウチの両親は普通の農家だった。住んでいた村でも、特に何も言われなかったが」

 今まで生きてきた中でも、貴族かもしれないと指摘されたことは無かっただけに深くは考えた事も無い疑問なので、レオンは困惑する。

「隔世遺伝とか、先祖に貴族の血が入っていたり?」
「うーん、そこまでは分からないけど。とりあえず、僕は貴族じゃないよ」

 レオンが貴族か、そうで無いかは、それ以上の事についてその場では調べようがないので、ケイは本人の証言を信じることにする。レオンは貴族じゃない、と。

 会話を戻して、師匠から譲り受けた夢の2つ目について尋ねるケイ。

「じゃあ、師匠から託されたっていう2つ目の目標は?」
「もう1つの目標。それは、ハーレムを築くこと」

「え。は、ハーレム……?」
「うん。かわいい女の子を集めて一緒に生活するのが目標」

 真正面から宣言するレオン。僕はハーレムを築くと。

「そんな事を96歳だった貴方の師匠は、夢だと言って託したの?」
「うん」
「……」

 ケイは思い浮かべていた、レオンの師匠についてのイメージが次々に変わっていく。若者だと思っていたら高齢者だったし。まさか、そんなスケベジジイだったなんて、と絶句する。

「どうかな?」
「いやーまぁ、その」

 レオンから純粋な目で見つめられながら、意見を求められてケイは口ごもる。ハーレムという言葉を聞いて、少し拒否感があった彼女。

 だけれども、よくよく考えてみたらココは異世界である。転生前の世界での常識で考えるべきではないか、とも思う。

 それに何よりレオンに対しては、肯定的でありたいケイだった。

「夢があるって事は、良いんじゃないかな」
「ケイも賛成してくれるか」

 ケイはとりあえず、賛成とも反対とも結論は出さずに議論を避けて、濁した言葉をレオンに返す。そんな言葉でも、喜ぶレオン。

「うん、まぁ頑張って」
「頑張るよ」

 まさか、そんな夢を持っているとは想像が及ばなかったケイ。そして彼女は、レオンを応援すると口にしておく。そんな感じで、2人の話し合いは終了した。


***


 レオンは、奴隷として買い取り転生者であったケイとの夜話で色々と語り合い、情報共有をした。

 そして冒険者の試験に合格した翌日からレオンは、早速活動に出かけることにする。有名になる為の活動、その一歩一歩を確実に進んでいく為に。