第13話 師匠の記憶と託された能力

「えっと、そうだったの。ごめんなさい」

 まさか既に亡くなっている人だなんて思わず、安易に聞いてしまった事について謝るケイ。

「大丈夫。もう、師匠とのお別れは済ませたからね」

 気遣うケイに優しく、そう返事をするレオンだった。彼は既に師匠の死について、気持ちの整理が出来ていたから。

「それで、えっと聞いていいかどうか分からないけれど、その師匠はどうして亡くなったの?」

 躊躇いが有りつつ、転生者だというレオンの師匠に関して話は聞いておきたいと尋ねるケイ。

 死んだ人に関して無遠慮に質問攻めにすると、故人に対して失礼になるかもしれないという事は承知しつつも、同じ転生者がどんな人だったのか、死因が何なのか気になって聞かずには居られなかった。

「師匠は老衰死だよ。本人は満足して逝けたと思う」
「ろ、老衰? え? 貴方の師匠は何歳だったの?」

 思わず、という感じで尋ねるケイ。彼女がイメージしていたのは、レオンの師匠と聞いていた情報から、二十代か高くても三十代ぐらいだと思っていたので、老衰死という言葉が結びつかなかった。

「師匠は確か、96歳で亡くなった」
「そ、そんなにご高齢の方だったのね」

 ケイが予想していた年齢を、遥かに超えるような年がレオンの口から飛び出してきて、彼女は動揺した。

 まさかの、転生者という人物に100歳近くまで生き続けた、なんて存在が居るなんて。つまりそれは、ケイがこの世界に転生してくる遥か昔にも転生者が居たなんて、彼女にとって予想外であった。

「師匠は凄い元気な人だったよ。亡くなる直前までは自分で食料を確保しに、森のなかに狩りへ出かけるぐらいの人だったからなぁ」
「へー」

 師匠の話をしている内に昔の記憶を思い出して、それを懐かしむレオン。話を聞いていたケイは、流石100年近く異世界で生活していた人間は逞しい、自分と同じ転生者とは思いないような生命力、活動力が有る人なんだという感想を抱く。

「それで、その師匠にチート能力を譲り受けたんでしょう? そんな事って可能なの?」
「正確に言えば、師匠は他人に能力を作ってあげられる、っていう能力だって言っていた。たぶん師匠にしか出来ない固有能力なんだって、他の転生者やこの世界に住んでいる人を含めても誰にも真似出来ない筈、って言っていたよ」

 過去にレオンも尋ねた事のあった、能力の譲渡に関する疑問についてを、尋ねてきたケイに話す。チートという能力を、師匠から与えられた能力に関する話について。

「そうなのね。ところで作ってもらったチート能力って、どんなの?」

 もっと具体的にチート能力に関して教えて欲しいと、ケイはレオンの持つ能力について質問し続ける。

「さっき見せた、アイテムボックス」
「うん」

 レオンが古着屋で買った服を手に持って運ぶのが面倒だからと、アイテムボックスという名の異空間に荷物を放り込んでいるのを目にしているケイ。納得する。

「それから常時能力強化、成長促進、危機予知能力、危機回避能力、鑑定、魔法習得率増加、仲間強化、仲間成長促進」
「ちょ、ちょっと待って。そんなに沢山!?」

 次から次へと数ある能力を発表していくレオンに、待ったをかけるケイ。止まる様子が無く本当に次々とんでもない能力が明らかになっていく、ケタ違いな情報を受け止めきれなかったから。

「うん、まだ沢山あるよ。ただ、忘れているものも多くて、全部把握しきれていないけれど」
「はぁ……? どんだけ沢山あるのよ。チートよチート、不公平だわ」

 少し聞いただけでも、便利そうな能力が沢山あった。生きるのが楽そうになる能力を沢山持っているレオンに、嫉妬の目線を向けるケイ。

「ケイが持っているのは、どんなチート能力なの」
「僕? 僕は……丈夫な身体、魔物に負けない戦闘能力、そして異世界でも元の世界にある化粧品や化粧の道具が使えるようになる、って能力を神様から授けてもらったわ」

 ケイは、レオンに能力について教えてもらったので自分も隠すわけにはいかないと、自らの能力について話す。

 前の世界で死んで今の世界に転生する、という直前に彼女は神様と出会っていた。そして急かされながら早く決めてと言われて、選んだのがその3つの能力だった。焦りながら急いで選んだにしては、ベストな選択だったと今でも思っているケイ。

「3つだけ?」
「僕の場合は、そうだった」

 他の転生者の事例を知らないので、ケイが与えられた3つの能力というのが多いか少ないか、正しく判断できない。ただ、レオンの持つ能力の数に比べたら圧倒的に少ないだろう。

「でも能力の数が少なくても、一つ一つはとっても便利なんだから。特に、化粧道具は変装するのに大活躍した」

 ケイはその能力を駆使して、男の子に変装をして奴隷商達の目を欺いていた。顔だけではなく全身に化粧を施して、身体検査も逃れていた。

 ただ、これはまだ成長していない子供の体だから出来たことで、年齢がもう少し上だったなら胸も出てきて見た目を少し変えても明らかになるから、変装は不可能だったかもしれないとケイは理解していた。

 レオンとケイの2人は、自身の持つチート能力についてお互いに情報を交換して語り合った。そして、話はまだ続く。