第04話 男だからって言えない

「それでクラリスは、何を聞きたかったの?」

 先程、彼女が何か話そうとする前に僕が別の話題について話し始めて、止めてしまった会話。何を話そうとしていたのかを、戻ってクラリスに確認する。

「はい。ギル様はまた、クランを脱退したいとレオノール様に訴えたと耳にしたのですが、本当ですか?」
「あー、うん。さっきレオノールと話して却下されてきたよ」

 何度か戦乙女クランから僕を脱退させて下さい、と訴え出ているのを彼女は知っているらしい。そして、少し前の出来事の筈の事も既にクラリスは知っているようだった。

 思わず生気の無いような声で、僕は適当に返事をしていた。

「なぜ、ギル様は戦乙女クランから離れようとしているのですか? 何か不満があるのでしたら仰って下さい。力になれるかどうか分かりませんが、改善のお手伝いをさせて下さい」

 真剣な表情を浮かべて、僕を心配してくれている様子のクラリス。彼女は、どうしてもクランから僕が離れては欲しくないようだった。原因を聞いて問題を解決してくれようと、手助けを申し出てくれた。

 ただ僕が戦乙女クランから離れたがっている原因は、残念なことに彼女には解決不可能であった。

「(クランを辞めたがってるのは、僕が男だから、って言えないよなぁ……)」

 クラリスには、僕が男だという事は知られていない。

 そして、特に彼女のように真面目な性格の女性にバレでもしたら、とんでもないことになってしまうだろう。女の格好をして男子禁制のクランに侵入していた変態男として衛兵に差し出されたりして、許してはくれないだろうな。

 そういう訳で彼女には絶対に本当のことは話せないし、申し訳ないが誤魔化すしかない。

「僕のような古顔は、そろそろ退いて後の子たちに任せたほうが良いんじゃないか、って思って」
「そんなこと、あり得ません! ギル様は、ずっと戦乙女クランのシンボルとして残るべきです」
「し、しんぼる?」

 僕の語った言葉の内容は辞める理由としては嘘だけれど、本音も少し混じっていた。あわよくば、後輩たちに後を任せて戦乙女クランを抜けられないか、と思っていたのだ。

 そんな僕の考えに対して、カッと目を見開いて辞めるべきでないと熱弁をするクラリス。

「と、とりあえずレオノールには却下されたから、しばらく戦乙女クランに残ることになりそうだよ」
「それがよろしいと、思います」

 クラリスの熱量に圧倒され、勢いに押された僕は戦乙女クランに残留する、という言葉を口にしていた。それを聞いて安心したのか、クラリスがいつもの物静かな雰囲気に戻る。