第09話 アロの初めての訓練

 アロを保護した翌日から、彼女の育成を開始する。先ずは、ゲームで培った知識から体力というステータス値を最初に上げるのが後々に有効だという事を知っているので、体力の上昇値が一番高い訓練である”長距離走”をアロに行ってもらう。

 長距離走とはつまり、ひたすら建物の外にある運動場で走ってもらうこと。ついでに俺も、自分の身体の性能を再確認するためにアロと一緒に走りこみをすることにした。

「えっと、走るんですか?」
「あぁ、そうだ。あそこにある線にそって走ってもらう。俺も一緒に走るから、先ずはアロが限界になるまで走ってみよう」

 運動場へ出てきて、今日行う予定の訓練内容を手短に説明する。と言うか走るだけなので、そう伝える。するとアロは訓練内容を聞いた後、走るだけという言葉に不思議そうな顔で問い返してきた。育成方針や、ゲーム知識などをイチから説明していたら一日が終わってしまうので、簡単に説明するしか無い。ただ、アロはそれ以上追求してこないで訓練に意欲を示してきた。

 そんなアロの今の格好は、綿で出来た真っ白な道着で身を包んでいて、両腕に鈍色に光る腕輪を装備している。更に頭には真っ赤な鉢巻を巻いていて、長い髪の毛は後ろでリボンで縛り、ポニーテールにしている。一昔前にあるような、格闘ゲームのキャラクターに居そうな格好をしていた。

 実はアロに装備してもらっている3つの装備である、道着、腕輪、鉢巻。これは、訓練の効果を引き上げる訓練で得られる経験値を増幅してくれる特殊装備で、装備するだけで非常に大きい効果があるものである。これらは、相乗効果で通常の訓練で得られる何倍もの経験値を得てステータス値を上げてくれるので、キャラクターに忘れず装備してから訓練を受けさせるのが良い。

 そんな装備をアロに渡し、装備させて朝食もしっかりと食べさせたので、昨日ベッドで目を覚ました時になっていた空腹や疲労などのステータス異常も回復させて、準備万端で訓練に挑むことが出来る状態になっていた。

 ちなみに、アロは昨日に引き続き今朝も俺の準備した簡単な朝食を食べた。
 準備した朝食を目の前に置いた時に最初アロは、昨日の夜にお腹いっぱい食べさせてもらったのに朝食も食べれるなんて恐れ多い、と恐縮し食べるのを遠慮していた。けれど、食事を満足に済ませないと訓練によって鍛える能力の上昇に大きな影響が出てくるので、少なくとも空腹状態にならない程度には食べてもらえるようにアロを半ば強引に説得して、遠慮せず食べるように促した。

 なんとか説得に成功し、美味しそうに朝食を食べ始めるアロを見ることが出来た。結局昨日に引き続き、またしても規格外の量を食べるアロ。
 一応、食事の後に訓練があることを説明済みで、満腹になって訓練の時に体調がキツくなるかもしれないから、と訓練に支障をきたさないようにコントロールして食べるようにと伝えておい。だが、どうやら食欲を抑えた量でも普通の人の感覚で考えると、とんでもない量を食べていた。

 どうやらアロはかなりの健啖家のようで、今まで貧しくて満足に食べてこれなかったから今のうちに食べ貯めておこうと言う考えではなくて、本当にたくさん食べないと空腹が満たせないらしい。

 そして、多く食べても気持ち悪くはなったりしないようで、むしろ体調が良いらしいとの事。今のところ拠点クラマの食料貯蓄には問題ないのだが、後々にアロの食欲を考えて食料品は買い溜めておく必要があるとしっかり覚えておく。


***


 そして、訓練が開始された。俺は自分の身体の性能を確認しながら、アロの訓練をフォローする。俺が運動場を走りだした時に、後ろにアロが続いて走っている。
 俺の走るスピードは、アロの低身長や歩幅を考えて少し遅めにする。それでも、アロの方からすると俺の走るスピードはちょっと早いようで、しばらくすると息が上がって呼吸が乱れてきたようだった。

 それから、俺はアロの様子を観察しながら1時間程スピードを変えずに運動場をぐるりと何周も走っていた。

 後ろを走っているアロが、ふらふらと身体がブレだして限界が近くなっていることが分かった。1時間経過した後もアロは粘りよく走って、30分程が経った時に限界が来たのか体の力が一気に抜ける。そのまま、力が入らないようで地面へと倒れこむ。その、倒れる寸前に俺はアロを抱きかかえた。

「ハッ、ハッ、ハァッ」
「お疲れ様、想像していたよりも優秀みたいだ」

 呼吸が乱れて返事もできないのか、俺の言葉にウンウンと頷いて反応するだけで言葉は帰ってこなかった。
 走り疲れたアロを休ませるために、彼女を横抱きで抱えて木陰へ向かう。その間に、情報ウィンドウを開いてアロのステータスを見てみると、体力のステータス値が訓練前に比べて一気に3倍に増えていた。

 装備させた3つのアイテムの効果もあるだろうが、アロの運が良かったのか初めての訓練で大成功して訓練による経験値が2倍になったのか、ステータスが大幅に増加していた。

 

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