第04話 少女との出会い

 アラームが鳴る音が聞こえてきて、目を覚ました。枕元にいつも置いている携帯が鳴っているのかと思い、まだまだ眠いし起きたくないと思いながら枕元に手にやって携帯を取ろうとするが掴めず、仕方なく目を開けた所で思い出した。

 そういえば、昨日はゲームからログアウト出来なかったんだ、と。

 ベッドに横たわって眠る前に少しだけ期待した。ゲームをプレイしていた時は、寝落ちすると自動でログアウトしてくれていたハズ。もしかしたら、今も寝て起きたら元通りになっているかもしれない。
 だが、昨日の夜の考えた通りにはならず相変わらず俺は、アイティオピアという現実世界のようにリアルになってしまったゲームの中に囚われていた。

 ログアウトできなかったかと残念がっていると、目を覚ます原因となったアラーム音が今だに鳴っている事に気づいて辺りを探る。いつの間にか目の前に情報ウィンドウが開いていて、どうやらそこから音が鳴っているようだった。

 そういえば、と思い出す。ゲーム内で何か緊急に伝える必要のある状況が発生した場合は、情報ウィンドウからSEが鳴ってプレイヤーに知らせてくれるシステムがあったっけ。寝起きだが気を引き締めて、情報ウィンドウから鳴っている音に対処することにした。

 目の前に浮かんでいる情報ウィンドウを操作して、音が鳴っている原因を探ってみる。すると、人材情報に新たなデータとして”採用したキャラクターが施設へ到着しました”と表示されていた。情報を選択して確認してみると、ウィンドウから鳴る音が止んだ。

 どうやら昨日新たに採用したキャラクターが本当に拠点へとやって来てくれたようだった。今は拠点の唯一の出入り口である門の前に居ると知らされた。
 情報ウィンドウに間違いがなければ、門の所に昨日採用とした少女が待っているのだろう。門はプレイヤーが操作しなければ開かない設定になっていたはずなので、行って門を開けてあげないと少女は拠点へ入ってこれないはず。
 待たせる訳にはいかないと、急いで門前へと走って向かう。拠点へやって来た新しいキャラクターを確かめに行く。


***


 急いで門まで走ってきて、門の仕掛けを作動させて開いた。

 本当に少女がゲームの通り来ているのか、一体どんな少女が来ているのだろうか、想像しながら門が開くのを眺めていると、門が半分ぐらい開いた所で少女がうつ伏せになって地面へ倒れているのを見つけた。

 どうやら、地面に倒れている少女は門に寄りかかって座っていたようで、俺が門を開いたせいで身体の支えが無くなって、地面へとうつ伏せになって倒れてしまったようだ。

「大丈夫ですか?」
 急いで近づいて声をかけながら少女を観察してみるが、地面に倒れたまま何の反応もしない。しかも、動く気配もなく意識がないように見えた。

「コレはヤバイか? 大丈夫ですか!?」
 つぶやきながらうつ伏せに鳴っている少女の身体を仰向けに動かして安否を確認する。浅く呼吸を繰り返しているようで、死んでは居ないようだ。もう一度声を掛けてみるが、少女が目を開く様子はなかった。
 このまま地面に横たえたままだと不憫だと思い、俺は少女を抱き上げて拠点の中にある建物の一室、休憩部屋へと彼女を運び込んで休ませることにした。

 彼女を両手に抱えつつ、休憩室へ向かう間に色々と考えていた。彼女は昨日採用したキャラクターなのだろうか、なぜ気絶して門の前で倒れてしまったのか。

 ゲームをプレイしていた時には、新しく採用して門前にやって来たキャラクターをプレイヤーが迎えて、互いの名前を交換をしてキャラクターを拠点内へ招き入れるという流れだった。
 しかし、ゲームの時とは違って、採用と選択し拠点へやって来たキャラクターが気絶して登場するというイベントは今まで一度も発生しなかったし、情報も聞いた事が無かった。

 ゲーム内とは違うイベント、どうやらアイティオピアというゲームの中から出れなくなった、という単純な状況ではないかもしれない。別の、本当に生きている世界なのかと考える。

 少女を休憩部屋へと運ぶと同時に、もう一度じっくりと観察する。
 容姿は非常に幼く見えて12歳~13歳ぐらいしかない小さな子供の顔つきだった。そして、身長は目測で140cm無いぐらいで非常に小さい。さらに、体重は抱えて持ってみた感じでは、信じられないぐらいに軽かった。昨日見た情報では、15歳と記してあったはずだけど、どうも情報よりも若く見える。

 もしかしたら、彼女は昨日採用と選択したキャラクターとは関係のない人物なのかと一瞬考えた。けれど、今情報ウィンドウの人物欄を確認してみると、運んでいる少女の人物情報がキャラクター情報一覧に追加されていた。

 ステータスを確認してみると空腹と疲労、そして気絶状態を示している事が分かった。身に着けている服装もボロボロで汚い。情報ウィンドウを操作して、身につけている服装を”休まるシャツ”と”休まるズボン”という名前の回復効果が付いた物に装備を変更する。

 ベッドで寝かしておいて、目を覚ましてから食事を用意してあげるのが最善であるかと、この後の事を考える。


***


 少女を休憩部屋のベッドに寝かせた後、食堂へと移動してきて空腹を満たすことができるような食料を探ってみた。

 昨日拠点を回った時に少しだけ覗いたけれど、その時に見た限りでは食料もしっかり保管出来ているようだった。食堂の中にある食材を幾つか取り出してきて、食べれるかどうか詳しく調べてみた。

 幸いにも腐っていたり毒があるような食材は無いようで、問題なく食べることは出来るようだ。使える食材を確認した後、食堂の調理場を使って簡単に料理を作ってみた。

 料理を作りながら、匂いを感じることが出来たり、しっかりと味を感じることが出来る事を確認していた。

 食堂には食材の他にも、調味料や調理道具が一通り揃っているので、食事を生活を続ける事は問題が無いようだった。ただ、食材は日数が経てば腐って食べてなくなってしまうし、毎日食べる事も考えると何時まで保つだろうか。
 食べるものが全て無くなる前に、拠点の外へ買い出しをしてくれる商人の技能を持ったキャラクター育成する必要がある。それも、なるべく早くに行う必要があるかもしれない。

 考え事をしながら料理をしていると、情報ウィンドウに表示させていた少女の状態に変化が起こった。少女のバットステータスから気絶が消えていたので、どうやら目を覚ましたようだ。

 俺は料理をつくる手を一旦止めて、飲み物だけを手に持って少女を眠らせていた休憩部屋へと向かった。


***


「あ、あの。ココは何処ですか?」
 部屋に入ってきた俺を見て、急いでベッドから立ち上がり近寄ってきた。そして、部屋に入るなり声をかけてきた。少女の出す声には力が無く、かなり弱っていることが容易に理解できた。そして、とても不安そうな表情をして見つめてきたので、空腹を満たす前に状況説明を先にする必要があると考えた。

「落ち着いて。とりあえずベッドに座って。あとはコレを飲んで、それから話しよう」

 ガラスのコップに淹れた”澄んだ水”を少女に渡して、飲ませる。不安な表情を浮かべて居たけれど、水を一気に飲んで少しだけ落ち着いたようだった。

「おかわりは要るかい?」
「えっと……、いえ、先にお話を聞かせてもらえますか?」
 お腹が空いて疲れているだろうけれど、少女の要望に答えて先ずは状況を説明する。

「ここはクラマという所で、君はこの場所にある門の前で倒れていたんだよ」
 拠点の”クラマ”という名前を彼女にそのまま伝えて、話し始める。

「地面に横たわっていた君を放っておく訳にも行かず、施設の中に運び込んで、ベッドで休んでもらって目をさますのを待っていたところだ。俺の名前はユウ。君の名は?」

 アバターに付けたゲーム内の名前であるユウと名乗ると、少女は急いで名前を教えてくれた。

「私はアロ、です」

 この出会いは長く続く関係となる少女との、初めての出会いだった。

 

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