第02話 差出人不明のメール

 俺の目の前に縦15センチ、横25センチの四角くて厚さの薄いボードが浮かんでいる。そのボードには、キャラクター情報だったり所持しているアイテムだったり施設の全体状況を記したりしてあらゆるデータを表示してくれる情報ウィンドウだ。
 訳の分からない事になってしまっている今の状況で、もう一度情報ウィンドウに表示されているデータを頼りに現状を見直してみる。

 まずはプレイヤーの情報について。昨日と変わらずレベルは539を示している。ステータスの数値は記憶してなかったので、昨日と全く同じかどうか判断できないが、変わっていないと思う。取得しているスキルも変わっていない。プレイ時間、所持アイテム数、拠点名等の細かな情報にも特に変わった所は無いようで、プレイヤーの情報については異常は見つからなかった。

 次に、プレイヤーの持つ拠点の情報について見直す。拠点については、育成に多く関わってくる大事な所なので、かなり課金して強化した為に記憶に強く残っていた。お金をかけた分、少しだけ念入りにチェックしてくが昨日との変化は見当たらず異常はなかった。

 その後は、アイテム一覧と育成キャラクターについて見てみたが、やはりここのデータに異常が見られた。

 情報ウィンドウを次々に見なおしていると、先程まで無かったはずのメールが届いている事に気づいた。メールは未読状態になっていて、受け取った時間も今から数分前だった。ログインしてから30分は経過しているので、つまりはログイン後に受け取ったメールというこという事になる。一体誰から送られてきたメールなのか……。

 不審に思いつつも、受け取ったメールを調べてみることにする。嫌な予感が頭をよぎったけれど、今は少しでも今の状況を知るための何か情報を手に入れたいと思っていたので、メールを急いで開いてみる。

 メールを開くと次のような文章が、情報ウィンドウに表示された。

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 タイトル:??????
 送信者:c c .c !c

  あ たはえればれました。かみサマ。
 女の子を育てなさい。
 蘇我、なたが助かります。

 Yes/No
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 先ほど運営へ向けて送ったメールの返信ではないかと少しだけ思ったけれど、どうやら運営からの返信メールではないようだ。そして、文章の内容も文字化けしていてよくわからない。とても不気味な文章の書かれたメールだった。
 唯一読めるのは、メール本文の2行目に書かれた”女の子を育てなさい”という部分だけ。後は意味が分からないスペースや入力間違い、そして変換を失敗したようなモノだった。最後の一行にYesかNoか書かれていて、俺に選べと言うような文字の配置がされている。

「えっと……、コレは一体なんだ?」
 メールを読んで最初に思った、嘘偽り無い感想だった。

 このメールは一体どこの誰から送られてきたのだろうか。文字化けしている送信者や、本文の内容から運営からの返信メールには思えないし、他プレイヤーから送られてきたイタズラメールなのだろうか。イタズラならば、なぜ今のような状況になって送られてきたのか。

 メールについて真相を明らかにしようとメールをじっくり眺めたり、考えたりしているが答えには辿りつけない。

 そうやってメールについて悩んでいると別の出来事が発生した。それは”人材採用可能一覧が更新されました”という表示が情報ウィンドウに現れたというものだった。
 この表示が情報ウィンドウに現れたということは、文字通り採用可能なキャラクターが一覧に追されたということで、拠点に所属させて育成を始められるということだ。

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 このアイティオピアというゲームでは、育成するキャラクターを決める方法は大きく分けて2パターンある。

 ひとつは、プレイヤーが色々な条件をあらかじめ提示して育成するキャラクターを募集をするという方法。募集条件を満たすキャラクターが現れた場合、人材採用可能一覧が更新されて、一覧に表示されているキャラクターを選択して拠点に所属させることが出来る。そうすることによって、キャラクター育成が始められる。
 キャラクター募集の条件には、年齢、性別、現在取得している技能等や他にも様々な要素を指定することができるようになっている。

 もうひとつのパターンは、キャラクターの方から育ててくださいと拠点へ志願しにやって来るというもの。
 これは、キャラクターの年齢や性別、技能などの条件は選べないし、突発的に起こるイベントでキャラクターが新たに登場することを予測するのが難しい。
 けれど、志願してきたキャラクターは募集をかけて見つけた人材に比べて、能力が高かったり、成長するスピードや成長限界が高かったりする。そのため、強いキャラクターを育成するためには、志願してきたキャラクターを育てる事がゲーム攻略サイトで推奨されている。

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 そして、突然一覧に新しく追加されたキャラクターは志願してきたものだった。性別は女性で、年齢は15歳。基礎能力が情報を見る限り非常に高く、特にパワーに関する能力が圧倒的に高い。技能は特に珍しい物は持っていないようだが、年齢も10代と若いので今後成長する見込が十分あるのに加えて基礎能力が非常に高いために、かなり強力なキャラクターが出来上がるだろうと、期待できる人物のようだった。

 キャラクターの情報を見終えた瞬間に、いつもプレイしている時と同じような感覚で良い人材を見つけたと無意識で情報ウィンドウに指を伸ばし、画面をタッチしてしまっていた。つまり、新たに現れたキャラクターを我が拠点に採用していた、という事。

「あ、ヤバっ」

 キャラクターのデータがロストしたり、運営と連絡が取れなかったり、ログアウトできないというヤバイ状況。今の自分に関してもよく分かっていないにもかかわらず、ゲームをプレイしている時と変わらず、気づけば新たなキャラクターを採用していた。

 少しの迂闊な行動で、問題が大きくなる可能性がある。しかし、訳も分からない状況を把握するため、状況を動かすことによって、なにか情報を手に入れられるかもしれないと考え直す。どうせ今のままでは何も分かっていない。だからと開き直ることにした。

 採用したキャラクターは到着まで”残り1日”と表示されたため、少女が拠点へやって来るまでしばらくの時間があるようだ。もう情報ウィンドウから手に入れられる情報は無さそうなので、次はキャラクターを育成するための拠点内部を探索して情報収集することにして、今いる部屋から出ることにした。

 

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