第06話 冒険者ギルドへの加入

 アルノルドは、冒険者ギルドの受付を任されている女性に向けて偵察任務の結果報告を始めた。

 その女性は二十代前半ぐらいに見える若そうな容姿をしているけれど、実際は十年以上はディフェシュタットの冒険者ギルド受付を担当しているベテランであった。そんな彼女は、話を聞きながらメモを取ったり、合間に質問をしたりして熱心に報告を聞いて理解し、後で資料として纏めるために効率よく動いていた。

 アルノルドの報告の途中には、モレナが彼の報告で抜けた部分の補足を入れたりして、正確に進んでいった。もちろん、その途中で登場するヴェルナーについてもアルノルドは正しく説明をしたが、受付の女性はヴェルナーに少し不審そうな目を向けるのだった。しかし、ヴェルナーに関しては特に質問はせずに話の先を促す。

 そして、偵察任務の結果を聞いてメモを量産していた受付の女性は、ペスカの剣のパーティーが掴んだ情報の報告が終わると、顔色を悪くして言った。

「なるほど、魔物の森の状況が少し分かりました。ペスカの剣のパーティーの皆さんが、無事にディフェシュタットに戻ってこれたことは、本当に嬉しく思います」

 受付の女性は、ペスカの剣のメンバーとは顔見知りであり、他の冒険者パーティーと比べると親しくしている間柄だった。だから、今回はペスカの剣のメンバーが無事に帰ってこれたことを本当に喜んでいた。

 けれど現在の魔物の森の状況を知って、あの場所で何かしら自分たちの考えが及ばない何か、緊急事態が起こっているのではないかと、不安な気持ちにも大きくなっていて、顔色を悪くしていたのだった。

「実はペスカの剣の方々と同じように、他の数十組の冒険者パーティーの皆様にも偵察任務を出していたんです。けれど、今のところ未帰還のパーティーが多くて……。魔物の森の中で、何か問題が起こっているのではないかと、冒険者ギルドでは急いで情報収取を行っているのです」
「そうなのですか? 知らなかった」
「一応、街の人達の混乱を抑えるためという理由で、冒険者ギルド内で守秘された情報ですから知らないのも無理はないです。実のところ、3ヶ月も前から魔物の森の状況がおかしくなっているのです……」

 本当は、あまり公開しないようにと冒険者ギルド内で守秘認定された情報をあけすけに話す受付の女性。そして、三ヶ月も前から確認されていたという魔物の森の異変を聞いたアルノルドは、事前に情報収集を怠った事を恥じていた。そして、受付の話を聞けば本当に自分たちは危なかったのだな、と今頃になって実感が湧いてきていた。

「ところで、申し訳ないのですが預けている報酬の引き出しをお願いしたい」
「はい、分かりました。では、金額をこちらの紙に記入して、こちらに手を置いてください」

 受付は、カウンターの上に一枚の紙と球体の水晶を置いてアルノルドに指示を出した。受付に言われたアルノルドは、素直に紙の方に十万ゴールドと引き出そうと考えている金額を記入して、ペンを置いた手をそのまま球体へと動かして、上からガシッと掴むように手を広げて、水晶の上から置いた。

 すると、一瞬水晶が光った次の瞬間にはカウンターの上に札束がポンと無造作に置かれていた。水晶の繋がる先に収納されていた、ペスカの剣が今までに稼いできた金貨が現れたのだった。

「大金ですね、袋を用意しましょうか?」
「すみません、頼みます」

 十万ゴールドは、ペスカの剣が冒険者として三年ほど活動してきて得た報酬を引き出さずに貯金していた分の、約半分だった。

 という事で、今のペスカの剣パーティーの所持する資金は十万ゴールドちょっととなり、ヴェルナーが持つ資金が今彼らから頂いた報酬分で十万ゴールドとなった。

 ちなみに、受付が思わず現れた金貨を見て口に出してしまった通り、十万ゴールドは大金である。ディフェシュタットで生活を送るのならば、人一人が十年ぐらいは働かずに生きていけるぐらいの大金だった。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

 受付から用意してもらった麻袋を渡されて、アルノルドはカウンターの上にある金貨を掴んで袋に入れ、掴んで袋に入れと言うように回収して全額を袋に詰め込むと、ヴェルナーにそのまま渡した。

「魔物の森から助けていただいたお礼と、街まで護衛して頂いた分の報酬です。受け取って下さい」
「うん」

 ずっしりと重みのある袋を任務の報酬としてアルノルドから受け取ったヴェルナーは、しかし今は収納する場所がないので、仕方なく左手で袋の口を締めるように持った。

「それと、もう一つお願いしたいのだが彼を冒険者ギルドに加入させてもらいたいんだ」
 アルノルドが、本日冒険者ギルドに訪れた最大の目的を受付に伝えた。ヴェルナーもすでに了承している、冒険者ギルドの加入。けれど、一体どんな試験をするのかは知らされていなかったので、アルノルドに任せてヴェルナーは黙っていた。


「それは、ありがとうございます! 魔物の森の問題で、今は一人でも多く働ける冒険者様が居らっしるのであれば、ギルドも安心できます。では、早速こちらの水晶に手を置いて下さい」

 受付は、先程アルノルドがお金を引き出した水晶を再び指して、ヴェルナーに手を置くようにと指示を出す。その水晶は、お金の管理に冒険者の能力を測る等、いろいろな用途で使える端末装置なのだろう、とヴェルナーは理解した。

 そのままヴェルナーは、アルノルドが先程手を置いたのと同じようにして、水晶の上に掌を置いた。

「え?」
 水晶を覗き込んだ受付は、その目で見て理解した内容に驚き思わず声を上げていた。そして、次の瞬間に彼女の放った言葉で、同じようにペスカの剣パーティー達が驚きの声を上げる。

「申し訳ございません。ヴェルナー様は、冒険者ギルドへ加入するための条件を満たしておりません。ですので、残念ながら冒険者として登録することが出来ません」

 

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