第05話 ディフェシュタット

 魔物の森から最も近い場所に存在すると言われている街、ディフェシュタットに3日ほどの日数をかけて到着したペスカの剣のパーティー4人とヴェルナー達。

 旅の最中には、ヴェルナーが中心になって辺りを警戒して魔物と遭遇しないように注意しながら進んで行き、戦闘は一度も行われること無く街へ辿り着くことが出来た。結果、怪我だらけのペスカの剣一行は、メンバーを誰一人欠けることなく無事にディフェシュタットへ来ることが出来たのだった。

 そして、食事や睡眠時の見張りなどもヴェルナーが率先して行っていたので、パーティーメンバーは十分に休息を取ることが出来た。なによりも、その間に魔物の襲撃が一度も無かったという驚異的な実績に、アルノルドはヴェルナーをペスカの剣のパーティーメンバーの戦闘斥候として迎え入れたいと、すぐに考えるようになった。

 そんな訳でアルノルドは知恵を絞って、どうにか彼をパーティーへと迎え入れるためにと、まずは冒険者ギルドへ加入してはどうかと誘っていた。

「ヴェルナー、貴方は冒険者になるつもりは無いですか? 助けてもらった時に見せてもらった戦闘能力。あれ程の力があれば、冒険者として十分に稼ぐことが出来るハズですよ。村に一人となったのならば、街に引っ越してくるのも良いかと思います。少し考えてみて下さい」
「わかった」

 街へと向かう道中で、アルノルドは度々このような話を繰り返してヴェルナーに冒険者となるよう誘った。そして、誘われたヴェルナーの方も情報収集に活用できるかもしれないと考えて、アルノルドの話を聞いていた。

 そうこうしているうちに、一行はディフェシュタットの近くへと到着した。街周辺には牧草地が広がっていて辺りは平地となっているので、ずっと遠くの方まで見渡せるような景色が広がっている。

 街に住むアルノルドの説明によれば、魔物の森からやって来るような魔物がディフェシュタットの街の側近くまで寄ってこないか目視で確認できるように、という理由でこの辺りには背の高い木や草などを一切生やさないで、けれど土地を最大限に生かせるようにと考えられて、家畜の飼料となる牧草を育成する草地にしているという。

「あぁ、ようやく到着した」

 レンガ造りの家屋が立ち並ぶ街の風景が見えてきた頃、先頭を代わって歩いていた魔法使いでパーティー唯一の紅一点であるモレナが、安堵の表情を浮かべて口を開いた。彼女は、魔物の森で多数のアサシンウルフに囲まれて、傷だらけになり逃げられそうにないという絶望的な状況から、よく街まで帰ってこられたというホッとする気持ちで一杯だった。

 他のパーティー三人も同様に、帰還の道中に本当に戻れるだろうかという不安と緊張から開放されて、ようやくリラックスすることが出来ていた。そんな中、ヴェルナーだけは街の外観を鋭い視線を向けて、じっくりと凝視し注意深く観察を続けていた。

 ヴェルナーが街を観察している様子をペスカの剣の一行は、初めて都会に来た田舎者が戸惑っているんだと言う風に勘違いして、優しさからヴェルナーに詳しく街の説明を始めたアルノルド。

 ディフェシュタットという街は、魔物の森から生まれ出る魔物を増えすぎていないか監視するために造られた、監視を目的とした場所でもあるという。

 そして、魔物の森から生まれ出て来る魔物の数に際限は無いので、いつでも定期的に冒険者ギルドに駆除の依頼が集まってくるので、この街では冒険者の仕事が他の街に比べると豊富で、腕に覚えの有る冒険者たちが金を稼ぐために集まってくる街でもあるという。

「魔物の駆除は命に関わる危険な仕事だけれど、その分報酬が高くて魅力的です。だから、ある程度の戦闘技術に自信があれば、この街で生きて行くのはすごく簡単で冒険者にも人気の街ですよ」
「なるほど」

 アルノルドから街の成り立ちについて聞きながら、ヴェルナーは辺りの観察を熱心に続けた。彼の個人的な好奇心というよりも、後々の帝国軍への報告のために必要な行動としてヴェルナーは動いていた。

 街に関して話をしているうちに、彼らは街の中心にある建物の前に到着した。ペスカの剣のパーティーが目的とてしている、冒険者ギルドである。

 アルノルド達は、街に到着してすぐ魔物の森の偵察依頼の報告をするために住処へ戻るよりも先に、冒険者ギルドのある建物へと立ち寄ったのだった。

 それから、ヴェルナーへ支払う予定の護衛の報酬を、冒険者ギルドに預けている金を引き出して渡すために彼にも一緒に行動してもらっていたのだ。

 アルノルドが先頭になって、建物の中に入っていく一行。ヴェルナーも、彼らの一番後ろに並んで建物の中へと入っていった。


***

 建物の中は、カウンターにとなっている仕切りの長い台とと、テーブルと椅子数個の組み合わせが置かれた、話し合いが出来るような広めのスペースが合った。そして、カウンターに向こうに座る来訪者の対応をする受付の女性が一人と、3人組の男たちによる一組のパーティーがテーブルに着いているだけで、他には人が居らずガランとしていた。
 正午を過ぎて、日が沈み始めた今の時間は人が居ないのが当たり前の風景なので、今も普通の状況ではあった。

「うん、そうか」

 冒険者ギルドのある建物の中に入ったヴェルナーは、納得するように頷きながら声を漏らした。

 魔物の森から、街へとやって来る道中、冒険者ギルドと呼ばれる組織の建物に入った今までで、ヴェルナーは科学機器的なモノを一切見なかったし、痕跡さえも探知していなかった。残念ながら見た目の通り、科学技術が未だに発達していない星に自分は降り立ったようだ。この様子だと、外宇宙との接触もまだのようだし、放置された惑星のようだった。

 ヴェルナーが、そんな風に考えているうちにパーティーリーダーのアルノルドは冒険者ギルドの建物の中にあるカウンターへと進んで近づき、受付に座る女性と魔物の森で起こったことを説明するために話を始めた。

 

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