第04話 街へ

 ペスカの剣と名乗る、4人のパーティーメンバー達は先の戦闘で満身創痍だった。狼の魔物、名をアサシンウルフと呼ばれている集団の獣に大小様々な傷を負わされたのだ。まずは、その傷を治療しないと行動できそうにないのだか回復薬は切らしている。

「バルナバ、ガイウスの傷だけ先に治してくれ」
「は、はい。わかりました……ッ」
 パーティーリーダーのアルノルドは、地面に座り込んで疲れ切った様子のバルナバに対して、心苦しさを隠して強く命令する。バルナバは疲労困憊で、回復魔法を使用するための精神力と魔力とが、底をついて残っていないことは分かっていた。けれど、ガイウスの傷は深く出血も酷い。回復薬は切らしているために、バルナバに頼るしか無く放置する事はできなかった。

「アルノルドさん、ガイウスさんの傷は何とか対処しましたが、僕はもう限界です」
「そうか、すまない。バルナバは、ココを出発するまでしばらく休んでいろ」

 目の下にくまを作り、真っ青な表情をして明らかに限界だと分かる様子で、パーティーのリーダーに報告を終えたバルナバ。そんな彼に、しばらく休んでいるように言うとヴェルナーに向き直り、話を再開する。

「ヴェルナーさん、改めて我々を助けてくれたこと感謝します。それで、我々は今ボロボロの身体で街に戻るまで、相当な足手まといになるかと思います。それでも、護衛をお願いしても大丈夫ですか?」

 先程、了承してもらった護衛の件を改めて確認するアルノルド。ヴェルナーが、あまりにもあっさりと了承したので、彼は事態をハッキリと認識していないのではないかと疑いの感情がアルノルドにはあった。

 それから、アルノルドはパーティーリーダーとして自分がどれだけ未熟なのか、そして未熟な自分達のパーティーの護衛は大変だ、ということを語り始めた。

 冒険者ギルドからの依頼で魔物の森の最近の動向を調べる仕事を受けて来た事。偵察任務だからと、まさか敵と遭遇して戦闘になるとは考えていなかった事。偵察任務だけを済ませて、極力戦闘を避けようと考えていたから回復薬は数を持ってこないという、準備が疎かだった事。そして、アサシンウルフと呼ばれている先程の魔物が群れで居るという習性を忘れて、一匹だけならば楽勝だと甘く考えて戦闘を始めてしまった事。最後に、戦闘に入って、周りからどんどんと敵が増えていき対処しきれない数になってパーティーの全滅目前となっていた事。

 数々の失態を告白していくアルノルドは、冒険者としては恥以外の何物でもなかった。けれど、今回の大失敗を今後の糧にしようと恥を耐えてヴェルナーに告白していく。

 アルノルドは語り終えて、それらを聞き終えた今も尚、護衛をお願いできるのかをヴェルナーに問うた。

「問題ない」
「ありがとう、恩に着ます。街まで、我々の護衛を頼みます」

 迷いのないヴェルナーの返答に、もう彼を疑わず信頼しようと決めたアルノルドは、改めて街への同行をお願いした。


***


 魔物の森は、高い木に空が覆われた場所で、昼間でも太陽が木の葉に隠れて薄暗く、方角を確認しづらい。だから、慎重に何度も進んでいる方向を確認して行かないと簡単に迷子になってしまう。

 なので、最初は先頭を進んでいたアルノルドも、何度も何度も時間を掛けて用心深く前進していたが、流石に進行速度が遅すぎると感じたヴェルナーは、アルノルドに変わって先導し始めた。


「こっち」
「本当に、道は合っているのか?」
「合っている」

 迷いなくズンズンと進んでいくヴェルナーの自信に、半信半疑で後ろをついて進むペスカの剣の3人。特にパーティーメンバーで魔法使いのモレナは疑り深く、先導するヴェルナーに問いかけるが彼は気にせずに、前をどんどんと進んでいく。

 パーティーの中で、アルノルドだけはヴェルナーを信じて疑わず後を歩く。

 すると、帰路の道中魔物と遭遇すること無く、5人は簡単に魔物の森を抜けることが出来た。もちろん偶然ではなく、ヴェルナーが自身のセンサー機能を使って敵の位置を随時把握して、避けて通ったから出会わなかったのだ。

「やった、森を抜けたッ!」
「助かった」
「本当に、良かったよ……」
「ヴェルナー、本当にありがとう。あとは、草原を抜けて街まで歩くだけだ」

 ペスカの剣のパーティーメンバー達は、魔物の森を抜けてようやく緊張を解いて喜んだ。特にアルノルドは、魔物の森を抜けるまでには後、三回か四回ぐらいは戦闘になるだろうと予想していたが、予想が外れて嬉しそうに喜んでいた。

 それから、草原を歩いて5人は街へと向かった。草原から外は行ったことがないとヴェルナーが打ち明けたので、今度はアルノルドが先頭を歩いて案内する。

「さっきは疑って悪かったね」
「大丈夫、問題ない」
 魔物の森を抜けるまで、一番ヴェルナーの事を疑っていたモレナがしおらしく謝った。他の疑っていた、ガイウスとバルナバの二人も草原に出られたことでヴェルナーの事を全面的に信用するようになっていた。

 街へ向かう道中にヴェルナーは、モレナ達から色々と今までの人生について問われていた。今までどのような生活をしていたのか、家族は、村が全滅したという話を聞いたが経緯は、という様々な質問に、ヴェルナーは随時適当に創作したカバーストーリーを語った。

 魔の森の中にある、今は廃村となった場所で一人暮らしていること。しばらく前に、魔物に村が襲われて生き残ったのは自分だけだった事。その他色々なデタラメな出来事を。


 こうして、3日ほどの旅が終わり5人は街へと到着した。

 

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