第03話 ペスカの剣

 

 魔物の森の中で戦闘を行っていた4人の男女達にとって、突然現れた見知らぬ男。その見知らぬ男であるCL-505型は、容赦なく狼のような姿をした獣に、躊躇いなく接近し、容赦なく素手で殴り屠っていく。そのスピードとパワーは圧倒的であり、一撃で敵の注目を集めた。

 狼の獣はターゲットを4人パーティーからCL-505型の方へと変更して、一斉に飛びかかった。しかし、CL-505型は敵の攻撃に一切慌てること無く、淡々と対処していく。飛びかかってきた一番身近な狼の獣から順番に、殴り、蹴り、攻撃を躱してカウンターを決めていく。

 その側で、4人のパーティーのリーダーであるアルノルドも支援をするように攻撃に加わる。そして、後衛から更にモレナの魔法が飛んでいき、狼の獣の死体の山が出来上がっていった。

 それからしばらく、CL-505型が敵に攻撃を加え続けて注目を集めつつ、元から戦っていた人間達への視線を逸らさせるように戦い続けた。

 死体が量産されて躯の絨毯が出来上がった頃、人間達の助太刀に入ったCL-505型の脅威にようやく気付いた狼の獣は、身体を反転させて、一気にその場を離れていった。文字通り、尻尾を巻いて逃げたのだった。

 敵が逃げていくのを見て死中から脱したと確認した四人は、本当に安堵した。そんな中、パーティーのリーダーを務めているアルノルドは、自分の判断ミスでパーティーが全滅の危機に陥ってしまったこと深く後悔していた。今回、助かったのは本当に奇跡だと感じていたのだ。

 安心して、杖は立てたまま地面へと座り込んだローブを着た女性であるモレナ、同じように錫杖を抱きしめながら、体力の限界で立っていられないようになった僧侶のバルナバは、尻もちをついて地面へとへたり込んでいた。

 全身鎧で大剣を武装したアルノルドは、疲れがピークに達しているけれど気力で耐えて立ち続けて、周囲への警戒を怠っていなかった。それに付き合うように、ガイウスは大きな盾を地面に突き刺して、アルノルドと同じように周囲を警戒している。

 4人の人間たちを、一人ひとりじっくりと眺めていったCL-505型は、危機は脱して安全になったと判断して、その場から離れようと森の奥へと歩き出した。

「ま、待ってくれ!」
 無言で立ち去ろうとした彼を急いで呼び止めたのは、パーティーのリーダーであるアルノルド。声をかけられたCL-505型は、立ち止まって呼び止めた男の方へと身体の向きを変える。

 素直に立ち止まってくれたことに安心したアルノルドは、急いでCL-505型の近くへと寄るアルノルド。全くの無傷であるCL-505型と、今回の戦闘で負った傷から血をダラダラと流しながらも気丈に立っているアルノルドが向き合う。

 アルノルドは、近くへと寄ってみるとCL-505型が身奇麗な人物であることに気づいた。先程の戦闘で、素早い動きをするのを目にしたが、敵から攻撃を受けている様子は見ていない。かなりの手練だろうと、先程の戦闘で判断した。

「なんじゃ?」
 見た目は若い彼の姿からは想像しなかった、地方独特で古臭い言葉の発音にアルノルドは困惑しながら、これ以上は不躾に観察するものではないかと、自分達を助けてくれた人物に無礼だと気づいて、無理やり意識を外して話し始める。

「私は、ペスカの剣のリーダーをしているアルノルドです」
 こちらも傷だらけの厳つい見た目からギャップの有る、礼儀正しい態度と口調。しかし、CL-505型は特に感じるものもなく返答する。

「私は、ヴェルナー」
 CL-505型は、この星で行動する時に名乗ろうと考えていた、直近の艦隊戦を行った宙域の名前にあやかって付けた偽名で答えた。その偽名に特に引っかかりを感じることもなく、アルノルドは彼を呼び止めた理由を語った。

「実は、私達のパーティーは先程の戦闘で回復薬を使い切ってしまって、もしお持ちでしたら売っていただきたいのですが?」
「すまん、持っとらん」
 ヴェルナーは、村を観察して覚えた言葉が通じているようで、表情には出さないが満足していた。一方、アルノルドは目的が果たせずに苦しみの表情を浮かべていた。

「そうですか……。よろしければ、貴方の住む村に案内していただけないですか?」
「案内できる。だけど、無駄」

 この場所から無事に街へ帰還するのには、回復薬は必要だ。先程の戦闘の結果から、強くそう思ったアルノルドは何とか薬を手に入れられないだろうかと考え、融通してもらえそうな場所を教えてもらうことにした。

「無駄、ですか?」
「今は、わし一人で住んどる。残りの住民は、全滅」

 ヴェルナーの語った話は、もちろん嘘。彼は、森の中を動き回っていて特定の拠点を持っていない。けれど、住んでいる場所がないと言うと怪しまれると考えたヴェルナーは嘘のストーリーを語った。

「そうですか……。それなら、お願いしたいのですが、一緒に街まで同行してもらえませんか? 貴方の力で我々を護衛していただきたい。もちろん、報酬を貴方の望む限り払わせてもらいます」
「わかった」
「本当ですか!? ありがとうございます」

 第三の案としてダメで元々という気持ちで、彼の戦力を期待して依頼したアルノルドは、予想に反して速攻で受けてくれたヴェルナーに驚きつつ、感謝した。ヴェルナーは、街に興味があったので丁度いいと考えての返答だった。

 こうして、ペスカの剣と名乗る4人パーティー組と、ヴェルナーという偽名を名乗ったCL-505型は一緒に行動することになった。

 

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