閑話03 酒場での出来事

 ネフワシの街で起こった反乱。そして、王国から送り込まれた鎮圧軍と大きな戦いとなって、結果は反乱軍の勝ちということになった。

 その勝利の貢献者は、ふらっと街にやって来て依頼を受けたジョゼット達で間違いないだろう。

 反乱を鎮圧するために送り込まれてきた、王国の兵士達を多数返り討ちにして街へ攻め入られる事もなく撃退した。その結果、戦いに出ていたネフワシの兵士には怪我人は居たものの死傷者はなく、街の住民や建物にも被害は無かった。

 鎮圧軍との戦いを、ただの市民達が団結して、数人の助っ人に頼った結果、大勝利で終わらせることが出来たと言っても過言ではない。その数人が事態お大きく変えるような、とんでもない戦力ではあったが。

 そして、ジョゼット達が求めた通りの報酬としてネフワシの街にある酒場を開放した、飲み食い自由という場所が設けられることになった。

「じゃあ酒をくれ」
「は、はい! ただいまお持ちします」

 店に入るなり真っ先に、お酒の注文を入れたのはニアミッラ。あまりに早い展開に、店員は驚きつつも、なんとか対応する。

「酒よりも、先に食べ物を腹に入れておきたい」
「何食べよう?」

 食い意地が張ったドリィと、料理を選んでいるミリアリダ。席につくと、ニアミッラとは違って酒よりも料理を先に注文する。そしてセレストは、黙ってテーブルに座ると顔を伏せて寝始めた。

「さぁ、皆。戦いの報酬にヘルムの奴が用意してくれた、美味しい飯と酒を堪能しよう」

 運ばれてきた酒と料理を前にして、ジョゼットが言う。ネフワシの街を守る、という仕事を達成した報酬として受け取った、この酒場での食事代、酒代を無料にしてくれるという約束。

 食事代、酒代の上限は決めていなかったので、ジョゼット達は店の食材を食い尽くす勢いで、食事を堪能していくのだった。本来の目的である、アディと合流するという事を今は忘れて。


***


 今までは貴族の横暴によって給料の中抜きされていて、安い報酬で働かされていた住民達。ネフワシの街ほど近くにある、リスドラの森と呼ばれている場所に生息している魔物を駆除していく、というお仕事。

 後にしっかり中抜きをして儲けていた貴族を街から追い出して、反乱を起こした。鎮圧軍も撃退している。開放されたネフワシの住人は、今までに無い自由さに皆のテンションが上がりまくっていた。

 その結果、良くない輩も現れる。

「この店は営業中か、酒と食べ物を持って来てくれ」
「ふぅ~疲れたぜ」
「早めに持ってこいよ」

 配慮の欠けた、荒い態度で酒場に入店してきた数人の男たち。店員に命令するような口調で言いつけると、お構いなしという感じで荒々しくテーブルに腰を下ろした。

 面倒事だと感じてジョゼットは眉をひそめる。反対に、面白そうだと表情を明るくするドリィ。その他のミリアリダ、ニアミッラ、そしてテーブルで寝ているセレストの3人は無関心を貫いた。

 そんな時に、店に入ってきた男たちがジョゼット達に気が付いて声をかける。彼女たちが何者か知らずに。

「なんだ、女がいるじゃねぇか。コッチに来て酌をしろ」

 男の1人がジョゼット達に向けて乱暴な言葉で、お酒を注ぐように命令する。しかし、当然聞く必要もなく無視をするジョゼット。

「街を守ってやった、俺達の言うことが聞けねえって言うのか!」

 男たちは、言うことを聞かずに無視をしたジョゼット達に激怒する。

 彼らは先程まで鎮圧軍との戦いを経て、戦後処理をしていた者たちだった。ネフワシの街が反乱に成功して、王国から送り込まれた鎮圧軍も撃退した。大きな事を成し遂げた、しかも、それを成したのは自分たちが貢献したおかげだと錯覚して、彼らは気持ちが大きくなっていた。

 本当に貢献した者であるジョゼット達を目の前にして、彼らは吠えた。だがまだジョゼットは、特に何も言い返すことなく、男たちの言葉に無視を決め込むジョゼット達。面倒だし弱い者いじめになるからと、見逃すつもりでいた。

「てめぇ、何とか言ったらどうだ。俺たちを無視するなんて、痛い目を見るぜ!」

 しかし、男の1人が暴力によって訴えようと、ジョゼットに殴りかかってきた。彼女たちの中で一番に背の小さいジョゼットを狙った、男たちの性根が理解できる。

 けれども、そんな一番に小さい彼女は狙うべきではなかった。ジョゼットこそが彼女たちの中に一番の実力者であり、敵うはずが無かったから。

「うるさいぁ」
「ぐぁっ」

 せっかく食事を楽しんでいるところを邪魔されて、気分を害したジョゼットは手加減するのもやめて男を返り討ちにする。

 意気揚々と殴りかかった男は、ジョゼットの軽く振るった拳で顎の骨を打ち砕かれる程の大怪我を負って、痛みにより気絶していた。ドンッと音を立てて床に倒れ込む。

「貴様!」
「殴りかかってきたのはお前たちの方だ。私は自己防衛したに過ぎない」

 殴りかかってきた方が悪い。そして負けるのはもっと悪い。と言うジョゼットの言葉に男たちは聞く耳は持たず、激昂する。そして、全員一斉にジョゼット達に向かって掛かってきた。

「ゲホッ」「ぬぁっ」「う”ぅ”ぅ”」「グァァァッ」
「弱っちいなぁ。食後の運動にもならない」

 向こうから挑んできたことを良いことに、ドリィが男たちを次々に倒していく。そして、倒れた男たちが気絶した山を作っていった。誰も、ジョゼットはおろかドリィにすら敵わない。

 ジョゼット達が座っていたテーブルの周りには、掛かってきた男たちを返り討ちにして気絶させた後の、男たちの倒れ込んだ山が出来上がっていた。