閑話02 アディと逸れた、その後の彼女たち

 アディが、いつもしているように気分の赴くまま勝手に行動を始めた結果、一緒に居た仲間たちから逸れて森の中、彼女は何処かへと行ってしまった。

「またアイツは、自分勝手にして!」

 そう怒っているのは、ミリアリダだった。彼女はアディといつもケンカのような衝突をしていて、別に嫌っている訳でもないけれど、ミリアリダがアディに突っかかっていくのが常だった。

 そして今も、アディの自由奔放さに苛ついてしまったミリアリダは、ストレスの捌け口を求めるように大声を出してアディを非難している。

「仕方ない、アディのアレは大目に見てやるしか無いだろう。セレスト、近くに街はあるか?」

 憤るミリアリダを、パーティーリーダーであるジョゼットが止めに入る。そして、今回の遠征で3度目となるアディの勝手な行動を、仕方がないと許してもいる。

 というのも、前にも2度アディが起こした勝手な行動を見守った結果、2度とも大物の魔物に遭遇することが出来ていた。結果良ければ全て良し、というジョゼットの考えでアディは許されているのだった。

 だから、今回もアディが勘に頼って行動を始めたのをジョゼットは止めようとはせずに、彼女の赴くままにさせている。そして、何か大きな事が起きるのではないかと期待していた。

 ソレが起こるまではゆっくりと待ち構えることにしようと、周辺の地理に詳しいセレストに一休みできる場所は無いか、と問いかける。

 仲間たちの中でも地理に詳しいセレストは、ジョゼットに問いかけられた質問に対して思いついた場所を答えていた。

「ココから近い場所にあるので言ったら、ネフワシかしら」

 ボーッとした感じのままでセレストは、そこから一番近い場所にある街は何処かと頭に浮かんだ名前を答える。それを聞いてジョゼットは、ひとまずその街でのんびりと待機して、アディが自分たちの元に戻ってくるのを待つ事に決めた。


***


「なんだか、あそこに戦いの気配がある」

 森を抜けた先にあった街を見て、そんな感想を口にするドリィ。彼女の感じたという状況は正しく、ネフワシでは反乱の準備が行われている途中だった。

 既に、元々ネフワシに居た貴族の領主は街から追い出し済みであり街の支配権を市民が奪っている状態だった、そして、もうしばらくすれば王国が派遣した鎮圧軍がやって来る、という危険極まりない直前に、ジョゼット達は街に寄ったのだった。

 そんな場所にやって来たジョゼット達は、少しも気にすること無く街に入っていくと、一目散に酒屋を目指し探すのだった。そこでアディが街にやって来るのを待つか、しばらく休んでから森のなかに再び入って探しに行くべきか、という予定を考える必要がある。ジョゼットは、そう現状を把握していた。

 しかし街に入るなり、彼女たちの元にやって来た1人の男性。見た目は普通の、中肉中背である中年男性がジョゼット達に話しかけた。

「ようこそ、ネフワシへ」
「あぁ、何の用だ?」

 ジョゼットが、話しかけてきた男に返事をする。少し警戒していると言うか、面倒そうという感じで返されたので男は慎重になりながら、会話を続けようと必死になる。

「もしかして、あなた達は傭兵ではないですか?」
「確かに、そんな仕事も請け負っている。貴方は、この街の責任者か?」
「えぇ、そうです。責任者と言っても、一時的ですがネフワシという街の代理領主をしてます。私の名はヘルム。どうぞ、よろしくおねがいします」

 女性達だけのパーティーで旅をしていて、そのパーティには1人も男性が居ない。なのに彼女たちは見た目から強そうであり、立派な武器を装備している戦闘集団に見えた。

 そして何よりも、魔物が多く生息しているはずのリスドラの森から、特にケガも無くやって来た彼女たちの実力は底知れない。

 そしてヘルムは、もうすぐこの街へやって来るだろう王国が差し向けた鎮圧軍に対処するための準備を進めている途中だった。だがら、丁度良く現れた彼女たちのチカラを借るべきだと、戦力に出来ないだろうかと傭兵としての仕事を依頼しようと考えていた。

「報酬は望むものを用意します。だから、ぜひ我々に雇われてくれないだろうか」
「なるほど、仕事の依頼か。良いだろう、依頼を受けてやる」

 ジョゼットはヘルムからの提案を、特に何も問わずに聞き入れた。そして、その報酬に酒場で自由に飲み食いさせてくれと頼んだのだった。

「わかりました、酒場での食事は自由に出来るよう取り計らいましょう」
「酒も頼む」
「了解しました。では食事を用意する代わりに、街に来る鎮圧軍から我々を守って下さい」
「わかった」

 多額の金銭を要求されるかもと構えいたヘルムは、報酬として求められたのは食事と酒だけだったので一安心していた。金を要求されるよりかは、安く済ませる事ができるだろうと考えたから。

 だから、ヘルムは食べ物を要求されて有り難いと思いつつ彼女たちの要求に従って酒場に食事と酒を用意するように準備を進めた。

 その代わりに間近に迫った戦いでネフワシの住人を守ってくれるように願う、という傭兵への依頼を出す事に成功した。

 こうして、最強と噂されるアマゾネス族の傭兵達の手を借りることに成功したネフワシは、数時間後に街へとやって来た王国が差し向けた鎮圧軍を撃退することに成功するのだった。

 しかも、反乱軍からは少しの怪我人だけで死亡者は出なかったという。反対に、鎮圧軍は多数の犠牲者を出して壊走した。結果、ネフワシの街で起こった反乱軍の大勝利に終わっている。