閑話01 アディの発見

 アデラヴィという女性は、勘を頼りにして今までの人生を乗り越えてきた。戦いにおいても、生活していく中でも、生きていく上でどうするか判断する基準に勘を頼りにするという事を重視してきた。

 だから、時たま仲間の制止を振り切って自由に行動する。今も、名も知らぬ森の中を仲間から離れて1人きりでフラフラと散策していた。

 仲間の1人から聞いた情報によれば、今いる森のなかには強敵になるような魔物が生息しているというらしい。アデラヴィ達は、魔物との死力を尽くす戦いを味わう為に国から出て、世界を探索して、今の居る場所にたどり着いていた。

「こっち、のような気がするんだけれど……。いや、でも、えっと……」

 今もビンビンと敏感に感じている、アデラヴィの勘。どちらに進むべきか、お腹を引っ張られるような感覚がする方向がある。それを頼りにして進むべき道を決めていく。

 アデラヴィは今まで生きてきた中で一番と言えるような、逃したらヤバイと思える強い予感を抱いていた。これを逃せば一生を無駄にしてしまうような、逃してしまえば本当に大事になるかもしれないという危機感もあった。しかし、何故こんなに自分は焦っているのか理解は出来ていないまま。

 まだ引き寄せてくる感覚を頼りにする。感覚は見失っていないから大丈夫、方向も間違っていないから後は距離だけ。都度都度で確認しながら森の中を必死になって突き進んでいく。

「あそこ、かな?」

 木や草の陰、木の上の枝や地面の中にも魔物達が潜んでいる場所を発見した。しかし、見た感じから不可解な状況だと思ったアデラヴィ。

 何かを見物するかのように円形となって集まっていた魔物達は、警戒しているのか同じ方向に視線を向けたまま息を潜めていた。

 アデラヴィが魔物達が向ける視線の先を辿っていくと、木の陰に隠れていた何かが見えた。

「あれは、……人?」

 目を凝らしてアデラヴィが見たのは、ボロボロな格好で地面に倒れていた男の姿だった。なんだ男かと、視線を外そうと、見捨てようとする判断を思い浮かべたアデラヴィだったが、何処かから声が聞こえた気がした。

 ”見捨てては駄目!”という声が。

 アデラヴィという女性は、勘を頼りにして今まで生きてきた。たった今も勘を頼りにして、どうするべきかを考えてみた。そして倒れている男を見捨てるという選択肢は捨てて、飛び出していく。

 フッ、と軽く息を吐く簡単な動作でアデラヴィの体奥底から力が湧き出てくる。そして湧き出てきた力を駆使して、大剣を振るう。鬱蒼とし生い茂る森のなかで。

 雷が落ちたかのような爆音を立てて木の真ん中あたりが、粉々に吹き飛ぶ。そして大剣の勢いは止まることなく、その木の先に居た魔物も巻き込んで吹き飛んでいく。

 木が生えているという場所を物ともせずに、ブンブンと大剣を名の通り大きく振って一度も止まることなく、集まっていた魔物を次々に吹き飛ばして倒していく。

 そして数十秒後には、生きている魔物は居らず、死体の山を築き上げた。集まっていた魔物は、アデラヴィ1人の手によって全滅させられていた。

「さて、一体どんな奴か」

 魔物の脅威が無くなり安全を確保できたことを確認してから、倒れている男に近づいていくアデラヴィ。手が届く場所まで近づいて、顔を覗き込む。

 ハッと気がついて、周りに魔物が集まってきている危険な状況になってようやくアデラヴィは長い間、倒れていた男の顔を眺めていた、無意識のうちに流れた時間に気がつく。つまり、アデラヴィは夢中になって男の顔を見つめていたのだ。

 そして感情を自覚することもなく、とりあえずこの場を離れないといけないとアデラヴィは考えていた。倒れていた男を肩に担いで、食料にするため魔物の死体から適当に一匹を手にとって木の上に飛び上がる。

 木の枝を伝って魔物の頭上を駆け抜けると、戦闘を避けて魔物から逃げ出す。魔物から逃げるなんてした事は生まれて初めて、という経験をしたアデラヴィ。

 そんな初めての事も気にせずに、とにかく先ずは抱えている彼を安静に休ませる場所を探さなければと必死になっていた。


***


 倒れていた男を肩に担いで歩き、良さそうな場所を見つけたアデラヴィ。男を地面に横たえると、枯木を集めて火をおこす。食事の準備をする為に。

 安静にしている男の顔を覗き込むアデラヴィ。この時には既に、彼女は男を自分の住む国へ連れて帰る方法を考えていた。

 アデラヴィが所属するアマゾネスという集団は、男子禁制の女性社会だった。だから、彼を連れて帰れば族長に怒られるのが目に見えて分かっていた。だから、どうするべきか。

「うーん、どうしよう」

 どうすれば、男を連れて帰っても怒られずに自分の手元に置いておけるか。悩んだアデラヴィは、とある昔の出来事を思い出していた。

「そういえば……!」

 遠い昔に、誰かが男性を連れて国に戻ってきた事があった。その時は、男性を奴隷として扱いモノだから良いと言う判断をされて許されていたのを見た覚えがあった。

 アデラヴィは、自分もこの男をモノとして扱えば自分の手元に置いておけると判断した。