第07話 罠

 ダンジョンを奥へと進んでいく。ダンジョン内探索は僕の魔法を使って、モンスターの位置、冒険者の位置をおおよそ特定して、なるべく人の集まっていない場所や通っていない場所を見つけては探索を進めていた。

 以外と人の目につかない場所が多いのか、人が来ない穴場をいくつか見つけてはモンスターを狩っていったのでかなり効率よく進めることが出来た。途中でダンジョン宝箱を1つ発見できたので、これだけで非常に儲けることが出来るだろう。

「いやぁ、エリオットの魔法のおかげでかなりモンスターを狩れたな!」
「本当にそうね。普段ならこんなに効率よくダンジョン探索を進められないわ」
 2人が僕を褒めてくれている。僕を意識しているようで若干大げさではあるが嬉しいと思う。しかし、自分ではそんなに大したことをしていないという感じだ。
やったことといえば魔法で遠距離から狩場を探ったことと、モンスターを見つけては牽制で魔法を放ったことぐらい。牽制用に放っている魔法は魔力を全く消費しないし、ダンジョンを進んでいる途中で回復もしていくので、このペースなら何日でもモンスター狩りを続けられると思う。そもそも、出てくるモンスターが弱すぎて話にならない。確かに今のモンスターなら無難に怪我もなく倒していけるかもしれないが、もう少しランクを上げれば更に稼ぐことが出来るはず。
なので、もう少し難易度の高そうな場所を探して進んでみたいという気持ちが湧いてきた。

「もうちょっと先に進んでみませんか?」
 下へ続く階段を見つけて、今の階層から更に先に進もうおという僕の提案に渋い顔をする2人。
「う~ん、私は行ってみたいけれど行ったことがない場所だからなぁ」
 フレデリカさんは興味津々だが、未知の階層に恐怖心もちょっぴり有るみたいだ。
「私たちはいつもこの階層までを拠点にして狩ってたから、この先の事は知らない」
 ダンジョンに潜ってから約2時間をかけて到着した場所。姉妹冒険者は、普段はこの辺りで狩りをしているというが、僕にとってここに居るモンスターは歯ごたえがなく感じる。ソレに、僕から見た姉妹の力量にも余裕を感じているので、少し先に挑戦しても大丈夫だとは思う。
ただ、この先の事を2人は知らないということは今まで知識ある状態ではなく事前情報無しで攻略を進めることになる。普通なら事前準備をしっかりして装備と食料、ダンジョン探索の道具各種を用意する必要があるだろう。
 といっても、僕は今までソロで活動している時はそこまでガッチリと準備したことはない。なぜなら、魔法があるので武器や防具などの準備は必要なく万全で、ダンジョン探索の道具や食料は常に魔法を使った収納空間、魔空間に各種取り揃えているのでわざわざ準備が必要なかったりする。

 2人はコチラを見つめて、僕の考えている姿を見ている。どうやら僕の判断を待っているようで、先ほどのセリフから2人は行きたくないとは言っていない。もし行くのなら挑戦してみようという気持ちを感じた。

「それじゃあ、もう少し先に進んでみましょうか」
 僕の判断に頷く2人の女性冒険者。早速、階段を降りて次の階層へと足を踏み入れる。

 次の階層も問題なくモンスターを狩っていけたので、次を最後にと言って更に下へと潜っていった。ソレが間違いだったのだろう……。

「え?」
 フレデリカさんの戸惑いの声が聞こえた瞬間、僕は彼女に駆け寄っていった。しまった、気を抜きすぎてしまった。罠という存在を軽視していた。罠感知の魔法を常に使っていたので、問題無いだろうと思っていたら非常に強く隠された罠をフレデリカさんが発動させてしまっていた。
 罠を止めようと魔法を詠唱し始めた瞬間に突然の浮遊感。足は地面から浮かび上がって、だけど内臓がグッと持ち上がり落下しているように感じる。遅かった!?

 これは……魔法陣!?

 焦りながらも瞬時に魔法陣に目をやるが、魔法陣に書かれた文字を読み切る前に視界が真っ暗に暗転。文字の内容から別の場所へ飛ばされたというのは理解したが、どこへ飛ばすのか転送先についてが読み取れなかった。どうやら、僕たちが今居る場所はダンジョンとはまったく別の場所へと飛ばされてしまったらしい。

 視界が戻り、浮遊感が無くなり、再び地面に足がつくと周囲を見回しながら警戒する。一体どこに飛ばされたのか。

「2人とも大丈夫?」
 ドアが正面に一つ、その他は鉄の様なグレーの色したレンガにしか見えない。この部屋の中にはモンスターは潜んでいないようだ。飛んだ先はモンスターが待ち構えているという最悪な状態は一先ず回避。僕は周りの観察を続けながらも、2人に声をかけた。

「私は大丈夫! シモーネ大丈夫か?」
「えぇ、私も大丈夫。腕も足も無事で怪我もなさそう。エリオットさんも大丈夫?」

 僕は2人に大丈夫であることを伝えて考えを進めた。フレデリカさんが魔法陣を発動させて、魔法陣は僕達を一緒にこの場所へと突然連れて来た。罠の種類が、パーティー全員に効果があるものでよかった。フレデリカさん1人だけが罠の効果にかかったり、女性だけという条件でなくてよかった。
痛恨なのは、どの場所へ飛ばされたのか分からない事。魔法陣の文を読み解く前に飛ばされたので、飛ばされた場所の先が検討もつかない。だけど、魔法陣に書かれた文字の内容からそれほど遠くの場所には無いだろうと思う。……いや、そう思いたい。
自分1人だけなら、時間をかけてじっくり探索でもするので焦ることも無いが、今2人の女性が同行している。コレは不味い。

「フレデリカさん、シモーネさん。すみませんでした、もう少し慎重に進むべきでした」
「え! エリオットのせいじゃないよ! 私が不注意で罠に引っかかったから、私が全部悪いんだ! 本当にエリオットのせいじゃないよ」
 フレデリカさんが気を使ってくれている。
「姉さんの言うとおり、エリオットのせいじゃないよ。ソレにまずは、これからどうするか考えよう」
 シモーネさんの言うとおりだった。パーティーが居る状態で、不慮の事態が起きたことにかなり動揺してしまっている。動揺したままでは正しい判断が出来ない、これじゃあダメだと自分を叱責する。
その時、何かの声が部屋に響き渡った。

「今の声は……!」
「不味いかもしれないわ……」

 僕も聞いたことのある声だった。僕の記憶が正しければ、今の聞こえた鳴き声はドラゴンの物だった。

 

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