第06話 ダンジョンモンスター

 階段を降りると薄暗くひんやりとした空気を肌に感じる空間へと出る。ダンジョンはいつ来ても温度がほとんど一定で、暑くなったり寒くなったりする変化がなく防寒装備などの準備が必要なくて体温調整は楽だが、このひんやりとした空気が僕は少し苦手だった。

 ダンジョン内は薄暗くて視界が悪いが、完全な真っ暗闇ではなく天井部分が発光していて松明が必要なほど暗くはない。なぜ発光しているかは未だに解明されていないが、松明や光の魔法で照らす必要が無く、光源の確保をしなくていいのはありがたい。

 このように、このダンジョンは装備が一定でランタンや松明などの光源が必要ないなど初心者には優しい設計になっているので、冒険者のダンジョン入門によく使われる。

 階段を降りた先は早速三方向に道が分かれているので、進む道を選択しなければならない。
「どの道を行きますか?」
「うーん、エリオットの好きな道で良いんじゃないか? リーダーは君がやればいいと思うよ」
「私も姉の命令を聞くぐらいならエリオットくんが言ってくれる方が良い」

 2人の意見により、パーティーのリーダーは僕になった。いつもソロで攻略していたので、今までパーティを組んだ経験が2,3回ぐらいと少ない。しかも、パーティーリーダーの経験は皆無なので断ろうと思ったが、2人の真剣な眼差しを見てしまい頷いてしまった。まぁ、再び冒険者となった僕は、いつかは経験するかもしれない将来に向けて経験しておくのも悪く無いと自分を説得して、リーダーを引き受けることにした。
 2人が尚も見続けてくるので、僕はすぐ進路を決定することに。

「あー、えっとじゃあ右に行こうか」
 人間の気配を読む探索魔法を使って三方向の道を探ると、左方向の道と真っ直ぐの道の先には何人かの人間が居るのがわかった。しかし、右方向は誰も居ないようで他の冒険者達に出会わないように右を選んだ。
2人は特に文句も無く選んだ道を進んでくれたので僕は安心して右の道を進んでいった。

 フレデリカさんが大剣を持って警戒しつつ一番前を慎重に進む。そして僕の後ろにはシモーネさんが弓で警戒し、今通ってきた後ろの道も警戒してくれている。僕は2人の間に挟まれて探索魔法を使いモンスターが居ないか警戒しながら道を進む。結構いいバランスの取れたパーティーで、即席にしては息も合った動きを出来ていた。

 出入り口からしばらくはモンスターがあまり発生しないので、奥へとずんずんと進んでいく。

 すると、前方に何かの反応を感じる。人間ではない何か。多分モンスターだろうと考え2人に警告をする。

「前に何かいます。モンスターか確認してから攻撃に移って下さい」
 僕の言葉に女性二人がうなずいてくれたのを確認してから、早足だったパーティーの進攻をゆっくりと慎重に進むように変える。

 じっくり足を進めていると、前方から何かが駆けてくる音が聞こえる。音の感じから、犬の様な走り方で4本の足を駆使して走っていることが分かる。

「見えた! 注意して、私が先に!」
 フレデリカさんが剣を握り直して、剣を立てて構える。中腰になって、いつでも振り下ろせるようになってからフレデリカさんは前方を注意深く観察している。
 僕は援護のために火を使った魔法を詠唱して溜める。

 5mぐらい先の薄暗闇に走ってくるモンスターが見える。どうやら、最初の敵はアーリーウルフと呼ばれる、白い体毛に覆われたオオカミのようなモンスターみたいだ。アーリーウルフは一匹だけ飛び出してきたのか、他のアーリーウルフは見当たらない。

「魔法で援護します! 続いて下さい」
 モンスターが一匹だけなのを確認した僕はフレデリカさんに声をかけて、後ろから魔法を彼女に当てないようにしつつ走ってきたアーリーウルフの目や口に向かって魔法を放つ。その魔法は矢のように細長くなって、まっすぐアーリーウルフの眉間に命中した。魔法を受けたアーリーウルフはそのまま絶命。ダンジョン内ではモンスターの死体は残らない。なぜならば、ダンジョン内で倒したモンスターは原理は分からないが、死んだ瞬間にキラキラと光る粒子に変わって分解される。

「は?」
 思わずといった戸惑った僕の声。フレデリカさんの援護のつもりで放った魔法は、アーリーウルフに当たり一撃で仕留めてしまった。僕の放った魔法は援護のつもりだったので、威力は少なく絶命させるほどの物ではないと考えていたが、当たった所が良かったのだろう、簡単に仕留められた。

「うわ、凄い! アーリーウルフを一撃で倒せるなんて、とんでもない魔法使いだったんだな」
 フレデリカさんはすごく驚いて僕を評価してくれている。

「私も驚いたよ。今までパーティーを組んだ中では一番実力を持った魔法使いだな。正直頼りにはしていなかったが、考えを改めなければならない」
 シモーネさんは魔法使いにネガティブな評価を持っていたようだが、再評価してもらえるようだった。しかし……。

「昔入ったダンジョンのモンスターに比べて、すごく弱く感じたなぁ」
「弱かったか?」
 僕のつぶやきを聞いたシモーネさんが訪ねてくる。

「はい、今使った魔法は牽制用にと思って使ったんですが、まさか一撃で倒せるとは思いませんでした」
「なら、もっと先に行っても大丈夫そうだな!」
 フレデリカさんは、もっと奥へ行くつもりなのか先頭を切って進む。僕とシモーネさんもフレデリカさんの後を遅れないようについていく。

 魔法の効果について少し疑問に思いながらも僕たちはダンジョン探索を始めたのだった。

 

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