第04話 自己紹介

 冒険者ギルドを出た僕たち3人はすぐにダンジョンへは向かわず、お互いの素性を知るためにダンジョンへ向かう途中の位置にある広場で話し合うことになった。広場には屋台を出して商売している店があったり女性が何人かで話しあったりしているが、閑散としているので話し合いにちょうど良かった。

 僕達は隅のほうの目立たない場所で話を始めた。

「さっきは姉さんがいきなり声をかけて、ごめんなさいね」
 無表情だった彼女が少し申し訳無さそうな顔をして謝ってくるが、そんな気にしてはいなかった。
「え! 迷惑だった?」
「いえ、気にしてませんよ。ダンジョンに入れるようになったんで、助かりました」
 フレデリカさんは驚くが、本当に気にしていなかったので否定する。

「ほら! 大丈夫だって」
「彼が親切で優しいからよ。普通は女性が男性に声をかけたらビックリして警戒されるわ。それにこの前だって、いきなり声をかけて無視されてた事があったじゃない」
「い、いやあれはさぁ、私のほうが馴れ馴れしくしすぎたから……って今はそんなことよりも、彼に自己紹介!」
 再び女性達2人で話し合いが始まろうとしたところをフレデリカさんが気づいて強制的にぶっ千切って、コチラに意識を向けてくれた。

「私は、フレデリカ・クロッコ。人族の27歳。で、こいつが私の妹。2人で冒険者をやってるんだ」
 横の女性は本当に妹だったらしい。親指で隣を示すフレデリカさん。
「シモーネ・クロッコ。不本意ながら彼女が姉で、私が妹をしているわ」

 先に自己紹介をしてくれた2人に続いて、次は僕の順番かとフードを取ろうとすると止められた。
「あぁ、フードは取らなくて良いよ! いくら人が少ないからって、こんな場所で顔を晒したら大騒ぎに成るよ」
 確かに今までの人生の中で素顔だったときに有った色々なトラブルを思い返してみると、この場所でいきなり顔をだすのは危険かもしれない。フレデリカさんの助言を聞いて今まで通りフードを被ったままにする。

「僕はソートソンの森のエルフで、エリオットって言います」
「あー、やっぱりエルフだったんだ!」
 冒険者ギルドの受付でフードを取った時に顔と耳をチラと見たらしく、エルフと知っていたと語るエリオットさん。
 
「それで、何故ダンジョンに?」
 言葉短く聞いてくるシモーネさん。僕は金稼ぎをするためという理由を正直に言うかどうか迷ったが、コレからダンジョンに潜る仲間となる彼女たちになるべく嘘はつきたくないと思って正直に話すことにした。

「実は、故郷に帰るための資金を稼ごうと思いまして」
「え? お金稼ぎ?」
 無表情だったシモーネさんが少し驚いた顔をする。やはりエルフが金稼ぎなんて俗っぽかっただろうか。
「あ、えっと。驚いてしまってゴメンナサイ。お金稼ぎということは宝箱狙い?」
「? モンスターを狩ってドロップ品を狙うつもりでしたけど……」
 ダンジョンにある宝箱は見つければ大金を手に入れられるだろうけれど、見つけられる確率が非常に低い。今回はエルフの村へ帰るための旅費だけ稼げればいいので、一日ダンジョン内でモンスターを狩っていれば旅の資金は十分手に入れられるだろう。だから今回はモンスター狙いだ。

「あのよ、馬鹿にするわけじゃないんだけど、男であるあんたがモンスターをどうやって倒すつもりだったんだ?」
 彼女たちは不可解な表情で僕を見ているので、何のことだろうと思ったがフレデリカさんの言葉を聞いて、そういう事かと思い至る。この世界の男性の殆どは筋力が弱くて頭もあんまり良くないというのが通説だ。だけど僕には魔法があった。
「僕、魔法が使えるんですよ」
「へ?」「え?」

 びっくりしている彼女たちにの目の前に手を出して、手のひらを空に向けて指を開く。呪文を唱えて手のひらの中空に火を出現させる。火は周囲に影響が出ないようにこぶし大の大きさで、出力を抑えて出している。
「本当に魔法が使える!? 凄い……」
「私、魔法が使える男の人に出会ったのは初めてだわ」
 フレデリカさんが本当にびっくりした様子で、シモーネさんはしみじみと言う。彼女たちがびっくりするのも当然のことだろうと思う。なぜなら、男の魔法使いは本当に少なくて一国に一人居るかいないかと言われるぐらいに少ない。
すると、シモーネさんが一言。

「ダンジョンに入るより、魔法を使ってお金を稼ぐ仕事のほうが安全だと思うけど?」
「そうだ! 男の魔法使いなんて珍しいんだから、その力を使う仕事を見つけたほうが安全に稼げるぞ?」
 シモーネさんのアイデアにフレデリカさんが助言を加えてくれる。だけど僕は思いつきで久しぶりにダンジョンへ行ってみたいと頭に浮かび、ついでに金稼ぎでもしようと考えていたので絶対にお金がほしいというわけでもない。その辺りを説明しようと言葉を出そうとするとフレデリカさんが遮る。

「そういえばこの国にも有名な魔法研究所が有るだろ? そこに言ったら雇ってくれるんじゃないか?」
 名案だとばかりに顔を輝かせて僕を見る。だけど駄目だ。

「えっと、実は僕そこで働いてたんです。でも、今日クビになっちゃって」
「え? あ、ご、ごめん」
 気にしていない風に言ったつもりが、かなり深刻に受け止められてしまった。

「いえ、大丈夫ですよ。魔法研究所でやりたい事は全部やれたんですけど、仕事をダラダラと続けていたんで向こうから辞めるように言われたのは丁度良かったんですよ」
「魔法研究所に居たって本当? 私、あそこに男性の方が居たなんて聞いたことがないんだけれど」
 どうやら、僕が在籍していた事は外にはあまり伝わっていないみたいだった。
「多分ですけど、僕が雇われたのはずいぶんと前で最近は研究所にずっと引き篭もってたんで、表に出てくることも無かったから僕のことを知らない人が多いんだと思います」
 原因を考えていってみたが、シモーネさんはまだ納得のいかない感じだった。

「でも貴重な男の魔法使いを辞めさせるなんて信じられない。もしかしたら、上の人に掛け合ったらクビは取りやめてもらえるかも」
「それも考えたんですけど、やっぱり研究所でやりたい事は全部出来たんで今辞めるのは丁度良かったんですよ」
 色々考えてくれているシモーネさんにはありがたく感じるが、自分の考えはあくまで変えない。
「そう? 貴方が良いならいいの。私達は貴方のダンジョン攻略を全力で手伝わせてもらうわ」
「そうだぜ! 力いっぱい手伝ってやるから旅の資金は安心しな」

 互いのことを知ったので次は、ダンジョン内でのコンビネーションを確認するために使用する武器について話し合った。

「私はコレだ!」
 フレデリカさんは後ろに背負っていた大剣を片手で担ぎ上げると、そのまま天に向かって掲げる。大剣は僕の身長と同じぐらいの長さが有る。そんな長さの剣を片手で持ちあげるなんて、凄い力があるのだろう。
「どうだ? カッコイイだろう!」
 めちゃくちゃカッコ良かった。前世の頃から大剣を振るう戦士キャラが好きだったので、叶うならば僕も同じように大剣を振り回したいと思っていた時期もあったが、全然筋力が足りないので剣を満足に持ち上げることすら出来なかった。そして結局は適正があった魔法使いになった。魔法も結構好きなのでこっちの道に来て良かったと思っているが、やはり大剣を掲げる彼女がとてもかっこ良く見えた。

「私は弓」
 次にシモーネさんは右手に弓を左手に矢筒を持って見せてくれる。矢筒は無属性の魔法矢を生成してくれるものみたいで、ダンジョン内でも弾切れの心配はないだろう。
「後はコレも」
 シモーネさんが弓と矢筒を肩に戻してから、腰にレイピアのような細身の剣を指さして見せてくれる。どうやらシモーネさんは剣術も使えるようで、フレデリカさんの豪快さとは逆に技巧的な感じだった。

「僕はさっき伝えたように魔法を使います」
 幾つか使える技を彼女たちに説明して、ダンジョン内での3人の動きについて話し合う。結果的に、フレデリカさんが大剣で前衛、僕が魔法で後衛から支援。そしてシモーネさんが弓を使いつつ状況を見て前衛にも出るという事になった。

 話し合いが終わり事前準備も出来たので、遂に僕たちはダンジョンへと向かうことにした。

 

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