第03話 姉妹冒険者

 後ろから聞こえたに向かって振り向くと、そこには2人の女性が立っていた。

 1人は真っ赤な太陽を思わせるような輝く笑顔をした女性。僕よりも少し背が高く、目線の先にはちょうど彼女の非常に大きな胸が飛び込んでくる。身にまとう服装も露出が多く、日に焼けている小麦色の肌がとても健康的に見えた。
もう一人の女性は、先ほどの女性とは対照的に青く静かな月を思わせるような無表情をしている。しかし、先ほどの女性と同様に結構な露出していて、肌は色白で控えめな性格そしていそうな雰囲気なのに非常に色っぽい格好をしている。
 2人の女性の顔立ちがなんとなく似ているように見えるので、もしかしたら姉妹なのかもしれないと思った。

 目線を上げると、明るい笑顔をしている彼女と目線が合った。そして、その彼女はもう一度同じように言った。
「良かったら一緒にダンジョンに潜らない?」
「えっと? 僕とですか」
 急な彼女の言葉に思わずそれだけしか返せなかったが、どうやら先程の受付の女性との会話を聞いていたようだ。

「さっき聞こえてきたんだけど、ダンジョンに入りたいんだろ?」
 えーっと、と言葉にならない声が漏れる。ダンジョンの入場許可が出ないという受付の言葉を聞いて、今回のダンジョン探索は諦めて故郷にでも向かおうと決心した瞬間に言われたので迷う。一旦はダンジョンを諦めたが、彼女たちの誘いを断るのも悪いし……。
どうしようかと一瞬の間に悩んでいると、彼女がアワアワと慌てだした。

「あ! いや、ナンパとかじゃないよ!全然、貴方が困ってるみたいだったから、善意で助けたいって思って。善意だから別にやましい気持ちとか無いよ!」
「姉さん、落ち着いて」
 僕が怪しんでいると思ったのか動揺しだして弁解を重ねる。慌てる女性を、側に立っていた無口で無表情の女性がなだめる。彼女が姉さんと呼ぶのを聞いて、やはり姉妹だったかと思いながらも慌てる女性となだめる女性を見ていた。
 尚も言い訳を続ける彼女の慌てぶりにびっくりしながら男性に物慣れしていない様を大いに感じ、多少の下心はありそうだが初々しい彼女の仕草に逆に安心できた。

「せっかく誘って頂いたんで、それじゃあ、ダンジョン一緒にお願いします」
「ほんと? じゃあ早速手続きを!」
 僕の了承の言葉。慌てた様子から一転、今度はとても嬉しそうな顔つきで彼女は喜んでいる。しかし、側に立つ女性が再び落ち着くようになだめる。
「姉さん、そんなにがっついたら下品に思われるよ」
「へ? いや、しかしだなぁ……」
 女性2人が話し合いをしている間に、僕は受付の女性に向き直り手続きをする。

「彼女たちとダンジョンに入ることにしたので手続きをよろしくお願いします」
「クロッコ姉妹達が同行してくれるなら大丈夫ですね。わかりました、それじゃコチラの名簿に記入して下さい」
 受付の女性が及第を出すクロッコ姉妹と呼ばれた冒険者たち。もしかしたら有名な冒険者なのかもしれないと思いつつ、受付が机の向こうから取り出し机の上に置かれたノートに日時と名前を書いていく。
 僕が書き終わると後ろで話し合っていた女性も会話を止めて、ノートの同行者の覧に名前を書き込んでいく。

「はい、コレで良いです。じゃあ、コチラをお持ち下さい。ダンジョン入口前の兵士に見せれば入場できます。忘れると入場できませんのでくれぐれも失くさないようにお持ち下さい」
 受付の女性はいいならが、四角形の木の板を渡してくるので受け取る。簡単に観察してみると木の板には幾つかの魔法陣が刻まれていて、色々な魔法、パッと見ただけで分かるのは識別の魔法が掛かっている事がわかる。簡単には偽造出来ないように作られているみたいだ、入場証を見つつ受付の話の続きを聞く。

「ダンジョンから戻ったら一度ギルドに帰還報告をお願いします。報告の際にはダンジョン内で手に入れられた宝物を持ってきて頂くようにお願いします」
 王都の近くのあるダンジョンは王都が所有するものなので、ダンジョン内で拾ったアイテムの3割は王都に渡さなければならない仕組みだったはず。自己申告制だから、手に入れたものよりも少なく報告することもできるが、後からバレると多くの罰金を取られるので正確に報告しないと逆に痛い目を見る、等など過去に冒険者をしていた時の事を思い出しながら聞いていく。

「報告に来ていただくのは、えーっと、エリオット様は男性なので期限がございます。報告は1週間を過ぎないようにお願いします。1週間を過ぎますと捜索隊が組まれてダンジョン内に捜索しに行く可能性がありますので、くれぐれも遅れないようにお願いします」
 コレは知らなかった。男性の保護法が強化された影響だろう。帰還報告は遅れないように気をつけなければ。

「説明は以上ですが、質問はございますか?」
「いえ、今のところ気になる事は無いので大丈夫です」
 説明を聞いて特に疑問に思うことはない、僕の返事に頷く受付。

「同行者はクロッコ姉妹なので大丈夫だとは思いますが、くれぐれも怪我の無いように気をつけて下さい」
「うん、ありがとう」
 受付の女性にお礼を言って、僕は冒険者ギルドで出会った2人の女冒険者達と王都にあるダンジョンへと向かった。

 

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