第01話 クビ

「さて、どうしようかな?」
 長年勤めていた王城の魔法研究所をクビにされ、追い出されてしまった僕は城下町を当てもなく歩いていた。頭に被っているフードをかぶり直しながら、今追い出されたお城の有る方角から目線を街へと向けて考える。

 本当に突然だった。勧告もなく研究所を追い出されてしまってビックリしていた。今まで着手していた王都防衛用の魔法に関する研究計画が途中なので、せめてコレを完了してからと交渉してみたが向こうは全く了承しなかったために、結局は出立の準備もロクにできずに持てるものだけを持って追い出されてしまった。
 所持金は殆どゼロに近いぐらいしか持っておらず、もうそのまま一旦故郷へでも帰ろうかと考えていると冒険者ギルドの看板が目に入った。

「うわぁ、懐かしい」
 確か初めてこの王都へとやって来た時に、最初の1ヶ月の間に生活費を稼ぐために冒険者稼業をやっていたのを思い出した。
冒険者としてちょっと有名になった僕は、魔法研究所にスカウトされたのだけれど、魔法について修行する旅の途中だった僕は、ちょうどいいと思ってスカウトを受けて魔法研究所で働くようになった。
 それから結構な時間が経って色々な魔法を身につけることが出来た僕は、既に王都に居る目的を無くしていたので、今回のクビは逆に調度良いとも考えていた。

 冒険者ギルドを見つけた僕は、故郷へ帰る旅費を稼ごうと考えて冒険者稼業を久しぶりに行おうと考えた。

 冒険者ギルドの中へ入ってみると僕はびっくりした。かなり建物の中がキレイになっている。表に掲げてある看板は当時の古いままだと思っていたので、懐かしいと回想しながら入っていたら中が全然違っていて驚いた。
やっぱり変わるものは変わるんだなぁとしみじみ思いながら受付へ。受付に座っているのは少し頬のコケた見た目の若い16歳ぐらいの女性。彼女は手元で何かの作業しているのか、視線は下を向いていたまま。
 僕は彼女に向かって呼びかけた。

「こんにちは、王都ダンジョンへの入場の許可証を貰いたいんですけれど」
 僕は、魔法ポケットに入れて持ち歩いていた冒険者証明証を取り出し受付へ渡す。冒険者稼業の中で一番稼ぐことが出来るダンジョン探索。だが王都の近くにあるダンジョンは王国の持ち物であり勝手に入ったら処罰されるために、入出管理を任されている冒険者ギルドに許可を貰わないといけない。そして、帰還の報告も冒険者ギルドで行ってから、ダンジョン内で取得した品の2割相当を献上するのが決まりである。少し面倒。

「は? 王都ダンジョンへの入場ですか?」
 入場の許可をすんなりと貰えると思っていた僕だが、受付の女性は呆けたような顔で僕へ視線を向ける。一体どういうことだろうか。

「えっと、王都ダンジョンはだいぶ前に王国から危険領域指定を受けまして冒険者ギルドで入場の許可は出していませんよ?」
「あれ? そうなの?」
 危険領域指定とは、相当に危ない場所なために特別な目的が無い限り、侵入するための許可が出ない。しかも、許可は王宮でのみ出しているので、冒険者ギルドでは絶対に入場の許可は出ない。
目的のダンジョンがいつの間にか入れないようになっていた。冒険者だった頃、一番稼ぎが良かったダンジョンなので当時はすごく重宝していたのだが残念だ。

「じゃあ、冒険者ギルドでも入場が許可できるダンジョンでここから一番近くにあるものを教えてくれないですか?」
「それなら、第4場ダンジョンが一番近いですよ。出現するモンスターは第3級までですし、オススメです」
 第3級のモンスター、10級まであるモンスター危険度ランキングの下の方。一般人では討伐は無理だが、冒険初心者達が2,3人で連携して挑めばなんとか勝てるぐらいの相手。
物足りないなと思いつつもオススメされた手前、久しぶりのダンジョン潜りの準備運動を兼ねて一応行ってみることにする。

「じゃあ、そこのダンジョンの入場許可をお願いします。コレが冒険者証明証ね」
「はい、受け取りま……え!?」
 僕が渡した冒険者証明証を見ていた彼女が驚きの声を上げる。また何か間違っていただろうか。

「コ、コレ、3世代前の冒険者証明証ですよ。私初めて見ました!」
「あーっと…そうなの?」
 どうやら僕の持っている証明証は、いつの間にか大分古くなっていたみたいだ。冒険者ギルドは建物の内装だけではなく、運営に関してもだいぶ様変わりしているようだった。

「あ、エルフの方……、し、失礼しました!?」
 今度は、証明証に記されている種族の覧を見て顔を真っ青に。立ち上がって頭を下げてくる受付の女性。何に対しての謝罪かわからないが、直ぐに大丈夫だと伝える。

「え? いや大丈夫、落ち着いて」
 だが、彼女は椅子に座ったもののガチガチに緊張してしまった。

「あ、あわ、あわわぅぅ」
 次は何を見たのだろうか、汗をダラダラ流す女性。若干、呆然としたような表情で目線を向けてくる。

「あ、あの、これ、これ?」
 言語機能が壊れてしまった彼女は、証明証のある部分を指さして聞いてくる。
「はい、そうですよ」
 彼女の指差す方向を見て、返事する。そういえば、フードを被ったままにしていたのを思い出す。僕はそれを頭から取っ払って、彼女に向き直る。

「正真正銘の男ですよ……って大丈夫ですか!」
 彼女は僕を見るなり、白目を向いて椅子ごと後ろへと倒れこんだ。そういえば、この世界に関する重要な事を忘れていた。この世界って男が珍しいんだっけか。

 

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