第02話 わからないけど楽しもう

 授業中を使って、今の状況を整理してみた。

1.男子がセーラー服を着て、女子が詰襟の制服を着ている。
2.いつの間にか、俺の家の制服もセーラー服に変わっていた
3.クラス1番の美女だった竜崎さんが、ブスに変わっていて、クラス1番のブスだった岬が、美人に変わった。

 何故か制服や美醜の価値観があべこべになってしまっている。
 いつからおかしくなった? 今朝、家の服装がおかしくなった時からだろうか。じゃあ原因は? 昨日の行動を追ってみた。

 昨日は確か、学校終わりに何時もどおり竜崎さんを帰りに誘ったが断られて、仕方なく一人で、スーパーに食材を買いに行った。スーパーでは野菜と牛肉が安かったので、カレーを作ろうと思って食材を買い揃えた。

 それから、家に帰って料理を作り食い。風呂入って、そして寝た。何時もどおり、何も問題のない生活だろう。もう一度、ぐるりと教室を見回すと、改めておかしなことに気づく。
(あれっ? 男子の数が少ない)
 詰襟とセーラー服が逆になった世界で、ややこしいことだが、どうもセーラー服を着ている人間が少ない。男友人の大森や河田。矢島が席から居なくなっている。代わりに詰襟を着た人物が座っている。詰襟ということは女子だろうか。

 全員見知らぬ人物だった。しかも、いつの間にか多くなった女子を更に良く観察すると皆、かなりデカイ。座っているから正確な身長はわからないが180cmぐらいあるんじゃないかと思わせるぐらいの大きな体格をしている。
 いや、もしかしたら彼女らは詰襟を着ているから女子だろうと判断したが、顔は前を向いていて確認できないから、本当は男である可能性もある。

 じゃあ、なんであべこべになったこの世界で、詰襟を着ている男子がいるのだろう。

 なんだか頭が混乱してきた。もう一度、整理すると、男子はセーラー服を着ていて、女子は詰襟を着ている。

(あーもう、なんでこんな状況になったのだろうか)
 結局、意味がわからなかった。


***


 授業が終わり、放課後になった。色々悩んだが、原因も対処法もわからないなら、楽しむのが一番という考えに行き着いた俺は、早速行動に移すことにした。

「岬さん、一緒に帰らない?」
 くるりと体を後ろに向けて、帰宅する準備をしている岬さんを誘うことにする。
「えっ、えっ?」
 どうやら、俺は別の誰かに声を掛けたのだろうと思った岬さんは、周りをキョロキョロと見回す。
「いやいや、岬さんに話してるんだよ」
「えっ? 私ですか?」

「もしかして、何か用事ある?」
 慌てる岬さんに、俺は気をかけて質問してみる。
「いえ、用事は無いですけど……」
 と、急に恐縮しだした岬さんの手を取って俺は言った。
「じゃぁ、一緒に帰ろうか」
「おいおいおいおい、滝沢お前何やってんの」

 急に割り込んでくる、友人。そして、俺の頭を腕で覆って俺と岬さんを引き離す。
「ちょっと、やめろよ友人よ」
「お前何、岬なんて女郎を誘ってるんだよ」
 頭を近づけて、小さく囁いてくる友人。
「めろう……? 何? 変か?」
「今日の朝からジャージだったり、岬なんて誘うなんておかしいぞ」
 おかしいのは、セーラー服を着ているお前だと言ってやりたかったが、なんとか押しとどめて、俺は疑問に思っていたことを友人に聞く。

「一つ聞きたいんだが、このクラスの一番の美人は?」
「はぁ? いきなりだな。うーん、今泉さんか沢村か、でも一番は竜崎さんだな」
 友人の中では、昨日と同じように竜崎さんが、美人ナンバーワンということに変わりはないのか。
「じゃあ、このクラスで一番下の女子は?」
「それは間違いなく岬だな」
 俺の中でのあべこべな価値観が、友人の中ではあべこべじゃないのか。これは困ったなぁ。

「もう一つ聞きたんだが、俺は昨日、どうしてた?」
「えっ? どういう意味だ?」
「昨日はセーラー服を着ていたか?」
 あまり答えを知りたくない質問。

「あぁ、何時もどおりだったぞ。なんで今日ジャージなの?」
 どうやら着ていたらしい。

「それじゃぁ最後に、昨日の俺は竜崎さんを帰りに誘ったか?」
「あぁ、何時もどおり、滝沢は昨日も竜崎さんを誘って断られてたな。何だ、クラス一番の美人がダメだからって岬は無いだろう」
 そういうワケじゃないんだけどなと、思う。どうやら、昨日の俺は正常(?)だったらしい。それが突然、世界が変わりおかしくなった。
 まぁ、さっき行き着いた答えの通り、楽しむのが一番という考えに変わりはない。
「友人、ありがとう。とりあえず俺が岬さんを誘うのは、間違いじゃないぞ。俺がそうしたいんだから」
 呆然としている友人を置いて、岬さんの元へと戻る。

「岬さん、待たせたね。一緒に帰ろうか」
「あの、本当に私で良いんですか?間違いじゃないですか?」
岬さんは、疑心暗鬼になっているようだ。うつむいて、髪で顔を隠している。

「いいんだよ、岬さん。俺は君を誘ったんだから」
 言って手を取ってやり、教室を出ようとした。その時、俺と岬さんの目の前に竜崎さんが立ちふさがった。

 

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